卵巣腫瘍診断におけるX線CTの役割
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概要
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卵巣腫瘍に対するCTの意義については未だ確立されていない.著者はこれについてとくに卵巣腫瘍良性悪性の術前鑑別をCTを用いてより客観的に行うことを目的として検討を行った.当教室で手術,剖検を行い病理組織学的診断を得られた卵巣腫瘍症例137例を対象として,その術前のCT所見を良性悪性間で比較検討し,以下の結果を得た.1)類皮嚢胞腫(42例)は全例特徴的なCT像CT値を示し,診断は極めて容易であった.2)類皮嚢胞腫以外の腫瘍(95例)のCT所見の検討では,(1)画像上嚢胞性を主体とした腫瘍では嚢胞壁からの突出のみられたものの70.8%が,また充実性を主体とした腫瘍では腫瘍内に液性部の所見があったものの92.9%が悪性腫瘍であった.(2)CT像からの腫瘍長径の比較では,長径15cm以上の腫瘍のうち59.3%が悪性腫瘍であった.(3)腹水をCTで指摘し得たものは全例,また対側の卵巣の腫大がみとめられたものは46.2%が悪性腫瘍であった.(4)腫瘍内容液のCT値は良性腫瘍18.26±13.10HU,悪性腫瘍20.6±7.49HUであった.また腫瘍充実性部のCT値は良性腫瘍51.67±16.80HU,悪性腫瘍37.73±10.34HUであり,その分布域は異なった傾向を示した.3)CT所見を株数量化理論II類を応用して解析し93.2%の良性悪性鑑別率を得た.またその結果からスコアを作成し,retrospectiveに91,7%の良性悪性鑑別率を得た.以上卵巣腫瘍診断に対するCTの意義について主として良性悪性の術前鑑別を中心に検討し,より客観的で精度の高い鑑別方法を考案した.
- 社団法人日本産科婦人科学会の論文
- 1984-05-01
著者
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