産科乏血性ショックにおける腎および子宮血流調節機序に関する実験的研究
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概要
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妊婦乏血性ショック時における血行再配分に対する腎および子宮血行の関連につき検討する目的をもって,非妊ならびに妊娠末期イヌを用い,ネンブタール麻酔下に,左股静脈より1分間3mlの速度で総量500mlの脱血を行つた際の右腎動脈血流量(RABF),右子宮動脈血流量(UABF)ならびに左外腸骨動脈圧(MAP)の変動を矩形波電磁血流計および圧変換器を介して記録観察した.MAPは妊・非妊時とも脱血200ml以後有意に低下し,RABF,UABFも減少を示すが,非妊時においては,300mlの脱血でMAPが平均64.6mmHg(以下平均値)に下降するとRABFは脱血前値から48.1%減少し,500ml脱血時(MAP34.6mmHg)には85.2%減少した.この際腎血管抵抗(RVR)は増加するが,子宮血管抵抗(UVR)は脱血400mlにいたるまで有意の変動はなかった.妊娠時には,RABFの減少は非妊時に比し緩慢で,500ml脱血時には50.1%の減少にとどまるのに対し,UABFは脱血200ml以後急激な減少を開始し300ml/min脱血時(MAP87.2mmHg)には脱血前値から48.3%減少,500ml脱血時(MAP59.8mmHg)には85.3%減少し,UVRの著明な増加をみた.このような妊娠時乏血性ショックにともなう血行再配分に対する交感神経性作動の関与につぎ検討するため,被験動物脱血経過中にnorepinephrine 50μgの静脈内投与を脱血100mlごとに反復し,腎ならびに子宮血管床反応性の推移を比較すると,腎血管床反応は著変をみないのに対し,妊娠時UVRの増加率は脱血200ml以後著明に増大した.以上により,妊娠個体の乏血性ショックにおいては,子宮を血行節約臓器の立場において母体腎循環を優位に温存する一種の血行貸借現象が,交感神経α-receptorを介する子宮血管床反応の亢進によって発現することを知りえた.
- 社団法人日本産科婦人科学会の論文
- 1982-07-01
著者
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