妊婦血清リポタンパクにおける過酸化脂質とα-トコフェロールの動態
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概要
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過酸化脂質は生体膜系に障害を与え, 細胞機能障害をもたらす.一方ピタミンE(VE)は抗酸化作用をもち過酸化脂質の生成を抑制していると考えられている.本研究は妊娠時にみられる血清中の過酸化脂質とVEの動態をリポタンパク代謝との関連において明らかにする目的で, 臨床生化学的検討を行なつたものである.その結果, 以下の成績を得た.1)正常妊娠例における過酸化脂質とα-tocopherol(α-toc)は妊娠の遂月的推移とともに増加したが, 妊娠中毒症例では過酸化脂質が正常妊娠例に比し, より増加するのに対しα-tccは値のバラつキが大きく一定の傾向はみられなかつた.2)妊娠時のリポタンパク代謝はTriglyceride(TG)の主なキャリアリポタンパクであるvery low desity lipoprotein(VLDL)の増加を特徴とし妊娠中毒症例では正常妊娠例に比し更に有意の(p<0.02)増加カミみられ, またHDL/(LDL)cholesterol比は非妊婦例に比し有意に(p<0.01)低下していた.3)過酸化脂質およびα-tocのリポタンパク中の含量は妊娠により総ての画分で増量するが, 正常妊娠例と妊娠中毒症例を比較するとhigh density lipoprotein(HDL)画分中の過酸化脂質は妊娠中毒症例では正常妊娠例に比し有意に(P<0.005)高値をとり, またα-tocは逆に有意に(p<0.005)低値を示した.4)血清各リポタンパク画分別に脂質量と過酸化脂質, α-toc含量の相関関係を検討した結果, 過酸化脂質, α-tocともにVLDL, LDL画分では脂質量と正の相関を示したがHDL画分では相関関係は認められなかつた.またVLDL画分では過酸化脂質とα-tocは有意の(p<0.05)正相関を, HDL画分では負の相関関係を示す傾向を認めた.以上の成績からみると, 高脂血症を伴う妊娠時における過酸化脂質とVEとの関連を検討する場合, 脂質量の影響が少なくかつ生体膜脂質との関連の深いHDL画分での観察がより意義あるものと思われる.
- 社団法人日本産科婦人科学会の論文
- 1981-08-01