合成LH-RHならびにdbcAMPの正常絨毛およびBeWo株細胞に及ぼす影響に関する研究

概要

論文の詳細を見る
絨毛細胞のホルモン産生, 分泌機構に絨毛中のLH-RH like substanceがcAMPをmediatorとして関与している可能性が考えられる.そこで, ヒト絨毛組織およびBeWo株細胞に及ぼす合成LH-RHおよびdbcAMPの影響をcAMP, hCGおよびestradiolを測定することにより検討し, 次のような成績を得た.1)絨毛中のcAMPは妊娠7週より急増し, 9週において最高値となり, その後漸減した.2)絨毛にdbcAMPを添加すると, estradiol産生およびhCG分泌は非添加群に比べて有意の増加を示した.3)絨毛に合成LH-RHを添加すると, 非添加群に比べてcAMP産生は5分後に, またhCG分泌は30分後に, それぞれ有意の増加を示した.しかし, この変化は添加した合成LH-RHの濃度が10^<-3>μMol以下では認められなかつた.4)BeWo株細胞にdbcAMPまたは合成LH-RHを添加すると, hCGおよびestradiolの分泌増加が認められた.以上の結果より, ヒト絨毛組織およびBeWo株細胞において, 合成LH-RHはcAMPを介してhCGおよびestradiolの産生, 合泌を促進するものと思われた.さらに絨毛組織中のLH-RH like substanceの存在^<1)2)13)17)23)>は, 胎盤由来のホルモンの産生, 分泌の何らかの役割を果たしている可能性が考えられた.
社団法人日本産科婦人科学会の論文
1981-12-01