ラット胚の着床過程に関する超微形態学的研究
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概要
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ラットの胚着床過程について電顕的観察を行い,次の成績を得た. 1) Attachment stageでは,胚と内膜表面上皮間に微絨毛の交互嵌合を生じ,ついでadhesion stageで微絨毛が消失した.その後両者は急速に間隙をせばめてsimple appositionの状態となり,さらにgap junction様構造や,intermediate junction様構造などの細胞膜のspecializationが観察された. 2) Invasion stageでは,内膜上皮の胞体内に脂肪滴の著明な増加やlysosomeの増加が観察された.そしてtrophoblastが内膜上皮細胞の間に複雑に侵入している像や,内膜上皮を完全に取りかこんでいる所見,また内膜上皮が全く消失している像などが認められた.これらの観察結果から,まず内膜上皮自体のautocytolytic mechanismあるいはautodegenerationが基本におこつたのちに,trophoblastのhistiolytic mechanismが,ついでphagocytic mechanismが内膜上皮に働くものと推定された. 3) 内膜表面上皮の消失後,trophoblastと間質細胞の間にdesmosome様構造が認められた. 4) 胚着床に際し,間質細胞では脱落膜化がみられるが,その細胞間相互にdesmosomeやtight junctionが観察され,またその胞体内にはfibrillar materialの出現をみた.これらの変化は内膜のtrophoblastic invasionに対応する上皮性防禦反応と考えられる. 5) このほか,脱落膜細胞間の細胞間結合の成立や,脱落膜細胞内に密集したglycogen顆粒がみられたし,さらにtrophoblastと脱落膜細胞間にsimple appositionやdesmosome様構造などが観察され,他方間質内の毛細血管内皮細胞では,壁の菲薄化やporeの拡大像が認められた.またとくに血管に隣接する脱落膜細胞では微絨毛様の突起やそれによるループ形成もみられた.これらの一連の所見は子宮内膜から胚への栄養補給に関する合目的な形態像を示すものと解釈される.
- 社団法人日本産科婦人科学会の論文
- 1976-03-01
著者
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