産科における血管内血液凝固症候群の成因に関する研究 : 殊に正常羊水と変性羊水の血液凝固学的差異
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概要
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産科における血管内血液凝固症候群(DIC)は, 或る特殊な産科疾患, 例えば子宮内胎児死亡時に発生し易い。この機序を明らかにする目的で, 正常妊娠時の羊水と, 子宮内胎児死亡時の浸軟変性した羊水との血液凝固学的差異を検討した.1) 正常羊水と変性羊水を Sephadex G-100 column chromatography に apply した結果, 正常では3つの分画, 変性では4つの分画に分かれた.正常, 変性羊水共に血液凝固亢進作用を示す分画があり, これは従来より云われていた, 羊水中にあるthromboplastinと考えた.変性羊水には, 正常羊水にはない, さらにもう一つの蛋白分画があり, この分画は凝固亢進作用と同時に蛋白分解作用を有することがわかつた.2)変性羊水中のみに存在し, 蛋白分解と血液凝固亢進の二つの作用を持つ上記分画を, さらに精製しても, この蛋白分解作用と血液凝固光進作用は認められた.このことから, 変性羊水中には, 血液凝固亢進性蛋白分解酵素が存在すると推論した.又, この分子量は約5×10^4であつた.尚, 正常羊水並びに変性羊水共に認められた.上記 thromboplastin と思われる凝固光進物質の分子量は約20×10^4であつた.3)蛋白分解酵素が果して血液凝固亢進作用を有するかどうかを明らかにするため trypsin, bromelain, lyso-zymelsesatiopeptidase, α-chymotrypsin について検討を行なつた.その結果, これらの蛋白分解酵素は, いずれも或る濃度域内で血液凝固亢進作用を有していた.
- 社団法人日本産科婦人科学会の論文
- 1974-12-01
著者
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