致死量放射線照射マウスに移入された胎盤細胞の分化に関する研究
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概要
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胎生早期の胎児外造血組織として知られる胎盤に多分化能 (pluripotential) をもつ血液幹細胞が存在するか否かを決定することは, 免疫能の個体発生に関連して重要な問題である. そこで, 致死量放射線照射マウスに胎盤細胞浮遊液を移入して以下の事項につき検索した. 結果の大約は次のごとくである. 1) 生存率: 静脈内移入群も腹腔内移入群も移入細胞数に比例して30日以上生存するものがでてきた. 非移入群は15〜17日目までにすべて死亡した. 2) 末梢血球数: 一旦減少した赤・白血球数はそれぞれ10日目, 13日目頃から回復してくる. 3) 脾コロニー: 移入後7〜8日目の脾臓には造血コロニーが形成された. 妊娠13, 15, 19日目の胎盤細胞10^6あたりの脾コロニー数はそれぞれ 2.6±0.2, 1.9±0.2, 0.8±0.3コであった. 4) 胸腺および脾臓の重量: 急激に減少した胸腺重量は4日目から徐々に回復に向う. 脾臓重量は7日目から急激に増加し, 15日目にピークとなり, その後減少して25日目頃正常値になる. 5) 組織学的観察: 移入後7日目の胸腺皮質はピロニン好性の大型細胞で満たされている. これらの細胞は盛んに増殖して髄質へと伸びていく. 7日目の脾臓には赤血球形成を主体とした骨髄系造血巣が認められる. これらは15日目に最盛期となり以後衰えてくる. この頃リンパ系造血がおこってくる. 30日目にはリンパ組織はよく発達している. 胚中心も認められる. 6) 抗体産生細胞数: 胎盤細胞移入マウスの悲壮における羊赤血球に対する抗体産生細胞数は, 20, 30, 45, 60, 90日目にそれぞれ10^6あたり18, 54, 171, 158, 604であった. 以上の結果から, マウス胎盤には血球形成の幹細胞があって, 骨髄系にも, リンパ系にも, そして抗体産生細胞にも分化する能力のあることが結論された.
- 社団法人日本産科婦人科学会の論文
- 1974-10-01
著者
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