老令婦人の視床下部-下垂体-卵巣系機能の研究
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概要
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女性における性機能の老化は, 視床下部・下垂体前葉機能の低下に始まって, これが卵巣に及ぶためか, あるいは加令に伴い卵巣が独自に機能を廃絶することに起因するかについては今なお問題とされている. 教室の一戸らは成熟卵巣の交換移植により, 妊孕令はおろか平均寿命をもはるかに越えた老令マウスでさえ妊娠分娩の性機能を回復することを実証し, 老令動物における間脳-下垂体性機能の潜在的存続を報告してきた. 本研究はヒト老令婦人においても性中枢がその機能を潜在保持し続けることを実証するべく, 閉経後92才にいたる健康老令婦人に対し, 下垂体の性腺刺激ホルモン(PG)分泌能, LH-RH 皮下注射に対する反応能, および授与性ステロイズに対する feedback 機構の存否について検討を行い, 以下の結果を得た.〔I〕閉経後婦人血中PGの radioimmunoassay の結果, LHは成熟期の約7倍, FSHは13.5倍に急上昇し, 以後90才以上までほぼ一定の高値が続く.〔II〕かかる長期に亘るPG過剰分泌状態にある下垂体でも, LH-RHに対して成熟期婦人とほぼ同様に正しく反応する機能を保持している.〔III〕閉経後のPG分泌昂進は ethinylestradiol 0,08mg/day の連日経口授与により成熟期レベルまで抑制し得ると共に, 閉経後上昇する FSH/LH 比も成熟期レベルに復する. 17α-acetoxyprogesterone 4mg/day 授与も僅かにPG分泌抑制を示すが estradiol による劇的抑制とは比すべくもない. また両者の併用はLH抑制に相乗作用を示した. これらは諸家の報告にみる去勢婦人での反応と一致し, 老令婦人の間脳-下垂体は卵巣ステロイズに対する feedback 機構を生涯潜在的に保持し続ける. 以上の成績から卵巣機能を完全に廃退停止した後の老令婦人でも, 間脳-下垂体はその機能を生涯にわたって保持していることが窺われ, 婦人性機能老化の起源は卵巣の老化にあるらしいことが明かとなった.
- 1974-01-01
著者
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