月経前症候群に関する研究
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概要
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月経前症候群については, 1931年の Frank の報告が端緒となって, 多くの研究が発表されているが, その後の業績も断片的なものにしかすぎず, その概念や本態論については未だに漠然としており, 解決されていない. 著者は, 本症の概念を整理し, その本態を究明するため, 統計的, 臨床実験的検討を加えたが, その結果次のことが明らかになった. I. 14〜40才の3233例の調査では, 77.9%に本症の発現を認めたが, Frank らの述べているような, 月経前のみで消失してしまうものはむしろ少なく, 約70%が月経開始後もひきつづき症状を訴えている. 従って, 月経前のもののみを本症とし, それ以後のものは別のカテゴリーに入れようとする考え方は正しくない. II. その主症状が精神神経系の症状であるにもかかわらず, これが単なる心身症, 神経症的なものでないことは, 精薄者のような情動障害のおこりにくいものにも, 本症が認められていることからも明らかである. III. 基礎体温曲線の解析から見て, 本症は黄体からの Steroid が正常に分泌されていると思われるものに発症しやすく, 黄体機能不全症には少ないことを認めた. IV. 更に黄体から Estrogen と Progesterone の分泌が増してくると, この両者が協調して, その Aldosterone 様作用が増強され Na の蓄積がおこり, 体液滲透圧は上昇し, ひいては Osmoreceptor を介して A.D.H. の分泌が促進され, 水貯溜をもたらすのであろう. これが本症の根底にある水代謝異常のおこる機序と考えられる. その結果種々の臓器に浮腫を生じ, その臓器, 器官の機能失調をきたすものと思われる. V. 更に Progesterone には自律神経系, とくに交感性の緊張をたかめる作用があると考えられるが, この作用がその失調症状を更に誇大化し, その Subclinical な病態をも顕症化するのであろう. 従って, 本症には Progesterone の存在が最も大きな意義を有するものと考える.
- 社団法人日本産科婦人科学会の論文
- 1970-04-01
著者
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