人子宮頚部上皮異常に関する病理組織学的研究
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概要
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人子宮頚癌の組織発生の解明並びに子宮頚部上皮異常の病理組織学的認識を目的として非癌摘出子宮頚部214例, 胎児11例, 子宮頚部上皮異常例86例について, 病理組織学的に研究した. 1) Squamo-columnar junction (S.C.J.) には74.6%の高頻度に化生上皮が介在し, 且 reserve cell (R.C.) は, 第1次 junction から全頚管領域に普遍的に存在し, 扁平, 円柱両上皮に分化する bipotentiality を有することが認められる. 2) S.C.J. を発癌の場との関連性で観察するとき, transitional zone (T-zone) の設定が望ましく, 頚管腺最外端を被覆する扁平上皮を含めて, 第1次 junction から内方の mature cell type, immature cell type. incomplete mature cell type の各上皮層を T-zone と定義した. 3) T-zone は成熟婦人に高率に見られ, 且, 成熟婦人の T-zone は reserve cell hyperplasia 即ち immature cell type が多く, 平均の長さは3.56mmであった. 4) 臨床的に T-zone 形成とビラン治癒過程は相関がみられた. 5) 上皮異常の病巣分布地図作成により, その占居部位は T-zone を含む頚管側に集中し, 86例中97.7%に T-zone との関係が認められ, 子宮腟部限局例は認められなかった. 6) 各上皮異常の共存所見, 類似性並びに各上皮境界等の観察から, 頚癌の組織由来として reserve cell が強く示唆された. 7) Carcinoma in situ は, 頚管の全周性の拡がりを示すこともあり, 一方は dysplasia は半周以上にわたり拡がることはない. 3/4周以上に変化のみられるときには, early stromal invasion を疑うべきである. しかし, 環状の拡がり方そのものは各上皮異常の診断基準になり得ない. 8) Carcinoma in situ 及び early stromal invasion の分類を試み, early stromal invasion には ca. in situ が先行することが示唆された. 9) 4例の dysplasia は6ヵ月より1年5ヵ月の間に ca. in situ あるいは early stromal invasion への移行をみた. 以上より, 子宮頚癌の好発部位は T-zone であり, 細胞起源は reserve cell に求められる. 即ち reserve cell hyperplasia→dysplasia→carcinoma in situ→early stromal invasion の一連の移行関係が示唆される.
- 社団法人日本産科婦人科学会の論文
- 1970-01-01
著者
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