周生期適応における副腎および脳カテコラミンの意義 : ラット胎仔における胎生期発育と低酸素負荷に対する反応性の検討
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
周生期適応における胎児catecholamines(CA)の意義を解明すべく,Wistar系ラット胎仔を用い,副腎髄質ならびに脳CAの胎生期動態を検討し,ついでhypoxiaに対する両組織の反応性を蘇生過程60分まで追求した.さらに副腎CAと糖エネルギー代謝との関連を,hypoxia時の脳エネルギー代謝に焦点をあてて検討した.副腎norepinephrine(NE)総含量は,胎生末期1週間では,緩徐な直線的増加を示した.一方,epinephrine(E)は胎齢16日に初めて検出可能となり,19日以後急増しNE量を凌駕したが,Eの急増と一致して胎仔の自発呼吸の確立が認められた.脳NEも胎生末期1週間で単位湿重量あたりの含量は3.6倍に増加し,NE作動性ニューロンの活発な発育が窺われた.分娩予定日胎仔の子宮内30分hypoxiaにより,副腎NE,Eはともに有意(p<0.05)に減少したが,減少率はそれぞれ18.7%および17.0%にとどまり,成熟胎仔の急性hypoxiaでは副腎CAの完全枯渇は起り難いと考えられた.また放出量はEがNEの1.6倍で,E優位であった.Hypoxiaにともない血糖は著増し,そのピークと副腎CA減少のピークは蘇生30分で一致し,副腎CAが糖放出に強く関与している事がin vivoで示された.また脳ニネルギー水準をenergy charge potential[(ATP)+0.5(ADP)]/[(ATP)+(ADP)+(AMP)]で見ると,hypoxiaによりその値は0.22に低下したが,蘇生により速やかに回復した.一方,脳NEはhypoxiaにより有意(p<0.02)に減少し,蘇生による回復は認められず,蘇生60分ではさらに有意(p<0.05)に減少した.以上より,Eの急増を特徴とする発育をとげた副腎髄質は,hypoxiaに十分な予備力をもつて反応し,分泌されたCAによる糖放出とそれにともなう脳エネルギー水準の急速な回復が確認されたが,これら一連の反応はhypoxia時の副腎CA分泌をtriggerとする脳防御機構とも考えられ,副腎髄質の重要性が示唆された.また重症hypoxia時の脳NE動態は中枢神経障害発生の一因となる可能性が推察された.
- 社団法人日本産科婦人科学会の論文
- 1985-04-01
著者
関連論文
- P-103 pulsed Doppler法による胎児肝静脈血流速度波形の検討
- 子宮頸癌合併妊娠症例の妊娠継続についての検討
- 119 胎児catecholamine系物質のヒト脱落膜prostaglandin産生に及ぼす影響
- 152 母体L-Dopa負荷による胎児Catecholamine
- 189 カテコラミン系からみたIUGRの特徴
- 345. 妊娠末期における母体, 胎児のL-DOPA, Dopamine動態
- 29 ヒト羊水中dopamineの産生とその代謝機構について
- 周産期の生理学-5-妊娠に伴う生理的変化--自律神経系の変化
- 胎児血流動態と胎児血液酸・塩基平衡およびカテコラミンとの関連
- P-89 正常妊娠でのNITRIC OXIDE(NO)産生の変化と妊娠中毒症、HELLP症候群における意義
- P-64 ヒト卵膜における細胞質内在型phospholipase A_2の存在と陣痛発来前後の活性変化
- 尿失禁と運動療法
- 産褥期の発熱(今月の研修テーマ)
- 妊娠中のNitric oxide(NO)産生の変化とその妊娠中毒症、HELLP症候群での意義(一般演題:ポスター)
- 出生周辺期における胎児・新生児カテコラミン系の変化
- 尿失禁の対策
- 192 dopamineのヒト脱落膜 prostaglandin産生刺激機構におけるcytosolic phospholipase A_2の役割
- 212 ヒト脱落膜におけるdopamineのprostaglandin産生機序についての検討
- 377 ヒト脱落膜のprostaglandin産生とdopamine receptorの検討
- 周生期適応における副腎および脳カテコラミンの意義 : ラット胎仔における胎生期発育と低酸素負荷に対する反応性の検討
- 315. 分娩時胎児ストレスの評価としてのcardiotocogram,羊水中および胎児血液中catecholamineの意義 : 第52群 胎児・新生児 IV (312〜317)
- 76.胎児低酸素症に及ぼす母体糖投与の効果,特に胎児脳エネルギー代謝を中心に : 第13群 胎児・新生児 III (72〜78)
- 無酸素症性脳症 (新生児脳障害の初期管理)
- 82 骨盤内嚢胞に対するエタノール注入療法