ヒト胎児の生物活性型oxytocin分泌動態と分娩発来機構への関与
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概要
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今日,ヒト胎児が特自のoxytocin(OXT)生成・分泌能を有し,しかもそれが分娩の発来や進行に与かる可能性があるものとされている.しかしそれの生理作用の機序や過程についてはなお明らかでない.そこで生物活性型OXTの分泌動態とそれの羊膜,脱落膜および子宮筋それぞれの受容体への結合動態を検討し,以下の成績を得た.すなわち,母死体液中の生物活性型OXT濃度を分娩開始直後のラット子宮筋の120,000×g沈査をreceptor sourceとしたradioreceptor assayにより測定する一方,羊膜,脱落膜および子宮筋におけるOXT receptor(OXT-R)動態を,それぞれの結合親和性と結合能から算定した.その結果,生物活性型OXTは妊娠29週以降の母体肘静脈血中に初めて検出され,37-42週:4.9±0.2μU/mlとなるがその濃度は免疫活性型のそれより低く,また尿中には全妊娠経過を通して検出されない.ついで分娩型式別に母児双方の濃度をみると,選択的布切例の膀動脈血では10.8±5.5μU/mlとなり母体血,膀静脈血のそれと相違がないが,自然経膣分娩例では45.2±10.8μU/mlとなり明らかに上昇し,しかも母体血,膀静脈血中の濃度より有意に高い(0.02<p<0.05).一方,羊膜,脱落膜には子宮筋におけるOXT-Rと比較し,その結合親和性に相違がなく結合能のみほぼ1/7となる特異的0XT-Rが存在するが,これら3者は妊娠末期になると子宮筋の結合親和性(p<0.02)および羊膜と子宮筋との結合能(p<0.02,p<0.01)がそれぞれ有意に上昇し,自然陣痛発来後は羊膜と子宮筋との結合親和性が上昇する一方(p<0.05, p<0.01),結合能が減少する(p<0.01, p<0.02)ことを認めた.したがって・ヒト胎児には独自の0XT生成・分泌能があり,しかもそれが直接子宮筋あるいは羊膜,脱落膜に作用して,そのうえ分娩発来・進行に与かっているものと考えられる.
- 社団法人日本産科婦人科学会の論文
- 1983-09-01
著者
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