絨毛癌より産生される免疫抑制物質の解析
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概要
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癌細胞は種々の代謝産物を細胞外に放出し,それが宿主の免疫応答系に複雑な影響を与え,結果として担癌宿主の腫瘍排除機構を障害することによって,腫瘍の生着・増殖を助ける機序が働いている事は古くから提唱されている.我々は腫瘍によるこのような免疫抑制機構解明の為に,絨毛癌をモデルとしてその解析を行った.即ち,絨毛癌培養細胞株より産生されている免疫抑制物質の免疫学的性状とそれによる免疫抑制機作について興味ある知見を得た.1)絨毛癌培養上清中には免疫抑制物質の他に,非特異的増殖因子が存在し,両者は免疫学的性格を全く異にする.2)絨毛癌培養上清中の免疫抑制物質は,免疫担当細胞中の特にT cellに働き,抑制性不細胞を活性化し,それが強い抑制性T細胞因子(TsF)を産生する事により免疫反応を低下させている.3)絨毛癌培養上清中の免疫抑制物質は,家兎IgGにて作成した非特異的免疫複合体や結晶化Fcフラグメントに特異的に吸収されるFcγリセプター様物質である.4)絨毛癌以外のある種のヒト癌細胞の産生する免疫抑制物質もFcγリセプター様性格を持つ類似の物質である.以上の成績より,癌細胞の産生するFcγリセプター様免疫抑制物質による宿主の免疫監視機構を抑制するメカニズムが明らかにされ,又それが母-胎児・胎盤間の妊娠維持機構に深く関与する物質である可能性が示唆された.
- 社団法人日本産科婦人科学会の論文
- 1983-04-01
著者
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