散発性および家族性上皮性卵巣癌におけるエストロゲンレセプターαとβの発現
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概要
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散発性上皮性卵巣癌50例,家族性上皮性卵巣癌27例のうち, BRCAl遺伝子に変異を認めた症例[BRCAl(+)群]17例, 変異を認めなかった症例[BRCAl(-)群]10例を対象に, その手術摘出標本を用いて免疫染色法によりエストロゲンレセブター(estrogen receptor:ER)αとβの発現を調べ, 臨床病理学的検討を行った. 散発性群, BRCAl(+)およびBRCAl(-)群のERα陽性率がそれぞれ66.0%(33/50), 82.4%(14/17)および60.0%(6/10)であり, ERβ陽性率がそれぞれ68.0%(34/50), 58.8%(10/17)および80.0%(8/10)であった. 散発性群において, ERβ陽性率は, 閉経前は54.2%(13/24), 閉経後は80.8%(21/26)と閉経前に比し閉経後に発生した癌で有意に高かった(p<0.05). 組織型別では, ERα 陽性率は, 粘液性腺癌は30.8%(4/13), 漿液性腺癌は84.2%(16/19), 類内膜腺癌は72.7%(8/11)と粘液性腺癌に比し漿液性腺癌および類内膜腺癌で有意に高かった(p<0.05). 臨床進行期III期症例の中でERαあるいはβの単独発現を認めた症例とERαとβの共発現を認めた症例の3年生存率は, それぞれ15.0%, 63.6%でERαとβの共発現を認めた症例で予後良好であった(p<0.05). BRCAl(+)群の組織型は17例中15例が漿液性腺癌であり,2例は類内膜腺癌であった. BRCAl(-)群において, 組織型別では, 粘液性腺癌2例全例, 明細胞腺癌2例全例にERαを認めず, 漿液性腺癌6例全例にERαを認め粘液性腺癌および明細胞腺癌に比し陽性例が有意に多かった(p<0.05). 以上, 散発性群においてERβと閉経後に発生したものとの関連性が示唆され, 散発性群と家族性を問わずERαと漿液性腺癌および類内膜腺癌の発生との関連性が推測された. また, 散発性群において予後推測因子としてのERαとβの共発現解析の有用性が示唆された.
- 社団法人日本産科婦人科学会の論文
- 2001-05-01
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