胎動心拍数図により診断されるnon-reactive patternとその症例の転帰
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概要
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妊娠32週以降42週未満の妊婦100名を対象に超音波ドプラ胎動心拍数計を用いたノンストレステスト (NST) を行い, 心拍数図のみから判定されるnon-reactive patternの診断精度を評価した. 次に, 胎動心拍数図により診断されたnon-reactive (「Non-reactive」) 症例25例 (IUGR 20例を含む) の転帰, すなわち胎児仮死発生率, 胎児仮死に至る日数, 分娩様式, Apgarスコア, 乳幼児期までの経過について調査し, 胎動心拍数図によりreactive (「Reactive」) と診断された対照のIUGR胎児20例の予後と比較検討し, 以下の結果を得た. 1. 心拍数図のみでnon-reactiveと判定された14例のうち, 胎動心拍数図によつて診断された「Non-reactive」症例はわずか4例であり, 残りの10例は「Reactive pattern」又は胎児安静期と判定された. したがつて, 胎動図を用いない心拍数図のみでのnon-reactive判定の偽陽性率は71.4% (10/14) であつた. 2. 胎動心拍数図で診断された「Non-reactive」25例のうち, 19例 (76.0%) がその後に胎児仮死に陥つた. 胎児仮死は「Non-reactive」と診断された0〜15日後に発生したが, 多く (13例, 68.4%) は5日以内に発生した. 19例中17例は陣痛発来前に胎児仮死に陥つた. 胎児仮死所見としては, 細変動消失が高頻度 (14例, 73.7%) に認められた. 3.「Non-reactive」と診断された20例のIUGR胎児と「Reactive」と診断された対照のIUGR胎児20例を比較検討したが, 胎児仮死発生率ならびに帝切率は「Non-reactive」症例において有意に高かつた. 4.「Non-reactive」と診断されたIUGR症例における胎児仮死発生の予測鋭敏度は81.0%, 特異度は84.2%であつた. 陣痛発来前の胎児仮死発生に限ると, 修正鋭敏度は93.8%であつた. 以上の成績より, 妊娠32週以降のNSTに際して胎動心拍数計の使用は診断精度を向上させること, ならびに「Non-reactive」症例の多くはその後早期に胎児仮死に陥いることが明らかとなつた.
- 1993-05-01
著者
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