弘前大式外科放射線治療法に伴う腹膜外死腔リンパ貯溜腫に関する臨床的観察
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概要
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1961年6月から1964年3月までの34ヵ月間に, 根治手術不能の主として第III期の子宮頚癌息者65例に対して, 当教室で考案した "弘前大式外科放射線治療" を行なった. この治療法は, 在来の(1)腔内ラジウム照射, (2)深部照射のほかに, (3)腹膜外式にリンパ節廓清術を行ない, 更に(4)実質内にラジウムを直接照射する方法で, 基靭帯の起始部を中心とした骨盤側背壁部に大量のγ線が照射されるのであるから, 術後に特殊な合併症や後遺症が発生するのではなかろうかと考えられた. ところが, 術中や入院中に死亡した例は1例もなかったばかりでなく, 尿管瘻, 膀胱瘻, 直腸瘻, 小腸瘻等を発生した例もなかった. しかし, 65例中の37例, すなわち57%に腹膜外死腔リンパ貯溜腫(以下リンパ貯溜腫と記す)の発生が認められたほか, 下肢の神経障害は23例(35%), 下肢や外陰部のリンパ浮腫は10例(15%), そのほか腹膜外膿瘍5例(8%), 腹膜外血腫および直腸出血はそれぞれ4例(6%), 直腸狭窄および皮下気腫はそれぞれ2例(3%), 膀胱出血は1例(2%)に認められた. 以上のような種々の合併症や後遺症のうち, 本報告では最も頻度の高かったリンパ貯溜腫に焦点を絞って検討した. リンパ貯溜腫は, 腹膜外式にリンパ節廓清か行なわれたほうが経腹膜式に行なわれたものより遥かに発生頻度が高く, 且つ巨大になる傾向を示した. また, 痩型の頻回経産婦, とくに弛緩性体質の婦人にその傾向があった. 本症が手拳大以上に増大した例は14例(38%)で他の23例(62%)はそれ以下の大きさであったが, 中には僅か10日間で3回穿刺により, 2570ccものリンパ液が得られた巨大な例もあった. 本症の発生を予防するために, リンパ管の十分な結紮を行なうと同時に側尾骨ドレーンを好発部位の腸骨窩にまで延長し, 排液を促進し腹膜外死腔の早期癒着をはかったが, 発生を予防することができなかった. 本症を発生したものにLymphographyを行なった例では, 貯溜腫に近接したリンパ管(輸入管)は拡張像を示し, そのすぐ下位の周囲には著明なリンパ毛細管の新生像がみられた. 本症の予防には, 未だ適確な方法はない. 治療にさいして, 穿刺排液は, むしろ避けるべきものの如くである. またとくに注意しなければならないことは, 二次感染に陥らせないことと, 陳旧性のものを再発癌と鑑別することとである.
- 社団法人日本産科婦人科学会の論文
- 1965-09-01
著者
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