弘前大式外科放射線治療法に伴う下肢の疼痛および知覚鈍麻に関する臨床的観察
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概要
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1961年6月から1964年3月までの34ヵ月間に, 根治手術不能の主として第III期の子宮頚癌患者65例に対して, 当教室で考案した "弘前大式外科放射線治療" を行なったが, この特殊な治療がなされた後に発生した合併症や後遺症について検討した. それらの中で, 前報では最も頻度が高かったリンパ貯溜腫について述べたが, ここでは65例中の23例, すなわち35%に認められ, 第2位の発生頻度をみた下肢の疼痛と知覚鈍麻について述べた. これらの症状の種類は多彩で, 下腿外側痛, 足底痛, 大腿外側痛, 腓腹筋痛, 足背痛, 第1および第2指痛など, あるいはそれらの部分の知覚鈍麻で, そのほか, はきものが、脱げ易い, 脱げても分らない, 足背屈ができにくい, 階段をのぼれない, しゃがむと立てないなど種々の症状があった. これらは生理解剖学的に考えて, 骨盤神経叢から端を発している神経, とくに腓骨神経および脛骨神経, すなわち坐骨神経の2大枝の神経障害によると思われるものが大部分であった. しかしこのほか, 外側大腿皮神経, 臀神経などが侵されたと思われた例もあった. これに反し, 閉鎖神経が侵されることは稀で, 1例だけであった. かかる神経障害の報告例は, 産婦人科領域ではほとんどみられないが, 著者は, 広汎子宮全摘後にも1例, 正常分娩後にも2例, 類似の腓骨神経不全麻痺例を経験しているほか, ラジウムを1側に挿置したのに反対側にだけ障害があらわれたというような例にも遭遇しているので, ラジウムの実質内大量照射が必ずしもその唯一の直接原因であるとは考えにくい. しかし, ラジウム挿置例に圧倒的に頻発することは事実であるので, 本症の発生にラジウムの実質内照射が重大な関係をもっていることは動かしがたい事実といえよう. かかる神経障害は, 何故か左側にやや頻発する. 発生時期は, 術後20日以内のものが多い. 本症の諸症状は, 6ヵ月以内に消失するものが大部分であったが, それ以上持続したものもある. これらの疼痛や知覚鈍麻は, 末期癌におこるものとは全く性質を異にし, 次第に増強したり鎮痛剤を必要とすることはなく, また長期持続例でも歩行障害を訴えた例には遭遇しなかった. なお治療法としては, ビタミンB_1の大量持続療法, 超短波療法, 温湿布療法あるいは運動療法など, 神経炎, 神経痛または神経麻痺に用いられる一般的な治療法が奏効した.
- 1965-10-01
著者
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