子宮内膜の組織化学的観察
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
1908年 Hitchmann & Adler^<1)>により子宮内膜が周期的変化を営むことが発見され, 1915年R. Schroder^<2)>が黄体との間の相互関係を示して以来, 子宮内膜に関する病理組織学的研究は枚挙にいとまがない^<3)4)>. しかし今日では既に内膜の病理組織学はその代謝形態をみるには不充分であるとされ^<6)>, 最近では人子宮内膜の組織化学的変化に関する研究が種々行われている^<6)7)>. 先に著者は正常人子宮内膜における核酸即ちDNA及びRNA, 多糖類及びアルカリフォスファターゼ(以下Al-phos,)について報告したが^<8)>, こゝに異常例258及び妊娠初期内膜107例を集めて同様の検索を行った. 1) 広義の卵巣機能不全例において, 正常例に比してDNAを除き或程度の発現低下を認める. そしてそれらは増殖期には必ずしも著明ではなく, 分泌期において証明出来る例が多い. 2) その中で, 不妊症のみを集めてみるとその傾向は多糖類において著明である. しかし基礎体温一相性の例にては, 内膜の月経周期に合わない発現を示す場合が多い. 3) 機龍性出血例に特異な所見なく, 筋腫及び内膜症にも著変はない. 4) 更年期及び閉経期の内膜では, 何れもその活性の低下乃至消失が認められる. 5) 正常妊娠初期の子宮内膜では, DNAは不定であり, RNAは極く初期にはよく存在する. 6) 多糖類は第10週迄は増加し, 以後漸減すると認める. 7) 妊娠初期内膜にはAl-phos. は殆んど存在しない.
- 1965-09-01