腟式手術侵襲時に於ける血清transaminaseの動態及びその意義に関する研究
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概要
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婦人骨盤内臓器摘出に当たり, 腟式手術に侵襲の軽微なる事実は既に種々の臓器機能の分析より証明されている. 著者は血清transaminase活性を, 腟式及び腹式子宮全摘患者について, 術後その逐日変動を追跡する事によって両術式間の侵襲度の相違を検討した. 術後血清transaminaseは直ちに上昇し2日目以内にpeakを迎え以後速やかに下降した後, 術後4〜6日目に再び上昇する例が多い. 上昇の度合はGO-Tの場合腟式手術例に軽度である事を確認したが, GP-Tに於いて両術式間に著差は認められない. 白鼡の大腿筋挫滅実験を行ない, 傷害局所の組織transaminase活性と血清transaminase活性を測定した結果, 少くとも侵襲直後の血清transaminaseの上昇は, 損傷局所に由来し, かつ上昇の度合は損傷領域の大きさと比例的関係を有する事を認めた. 術後遅れて血清transaminaseが再上昇する機序は全く解明されていないが, BSPと対比検討した結果, 術後BSPが高度の血中停滞を示すも漸次正常値に回復しGP-Tと全く相関 しない事実を認めた. 又白鼡の肝GO-Tは骨格筋挫滅後に著減を認めないが肝GP-Tは著滅する. しかるに血清transaminaseはGO-T, GP-T共略々子宮全摘除患者における術後変動と同様の消長をみせる. 以上より著者は術後の血清transaminaseの変動は, 損傷局所より酵素が逸脱する機転の他に, 何らかの機構の介入を考慮し, 子宮全摘除術後の尿中17-OHCS排泄値の測定及び挫滅白鼡に対するhydrocortisone acetate. 又はDADA投与実験を行ない, 侵襲後の血清及び組織transaminaseが副腎皮質機能と密接な関連を有するものと判断した.
- 1965-01-01
著者
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