産婦人科領域に於ける血清ムコ蛋白に関する研究 : 特にその基礎的研究
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概要
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著者は血清ムコ蛋白を産婦人科各種疾患並びに実験的外科侵襲及び諸種stressを加えた臨床例並びに動物実験から観察して, この物質の動態及びその意義, ひいては結合組織の生体に於ける意義を解明せんとして本研究を行った. Meyer, MorganによるWinzler法の変法を用いて健康婦人11例, 婦人科各種疾患々者40例につき血清ムコ蛋白定量を施行した. 家兎では開腹前後の変動を逐日的に観察し, 又その耳介を切断し, 切断側と健常側とより同時に採血して血清ムコ蛋白量の消長を追跡した. また1℃の寒冷に4時間曝露し, その血清ムコ蛋白, 末梢血好酸球の動きから寒冷Stressに対する反応状態及び下垂体副腎皮質系との関連を検索した. ACTH10単位/kg1回投与と同量連続3回投与によって血清ムコ蛋白に及ぼす下垂体副腎皮質系の影響を観察した. その結果, (1)健康婦人の血清ムコ蛋白量平均は93.04±4.34mg/dlでBiuret法を用いたWinzler等の成績より少しく高値であった. 疾患別によるものは, 疾患群の平均は推計学的に一様ではないが, 特異的に高値を示す疾患は見られない. (2)家兎開腹では, 逐日的に漸次上昇を辿り開腹後4日目をPeakとして増減する. 耳介切断では, 切断側も健常側も逐日的に上昇するが, 前者に於いてその値は高い. (3)寒冷Stressを受けた家兎の好酸球数は平均減少率50%をもって低下するのに対し, ムコ蛋白は増加する. (4)ACTH負荷の場合は, 1回投与では血清ムコ蛋白は著変なく, 3回連続投与で一過性の上昇を認める例があった. 以上から, 血清ムコ蛋白は組織の破壊又はその修復過程を反映して消長する. 又Stressに対する急性相の反応物質であるが, 下垂体副腎皮質系とは独立した態度を示す. ムコ蛋白が結合組織基質の特徴的物質である事から, 本物質の各種Stressに対する反応は生体防禦機構の一つである間葉組織の反応の様相を示唆するものであると考えた.
- 社団法人日本産科婦人科学会の論文
- 1963-11-01
著者
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