婦人科手術侵襲時に於ける血清ムコ蛋白の動態及びその意義に関する研究
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概要
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著者は先に血清ムコ蛋白のStressに対する反応態度及び障害組織より血中への放出状態を報告したが, 今回は婦人科領域手術侵襲時に於ける本物質の動態に注目した. 即ち手術による組織損傷を鋭敏に反映して消長すると考えられるムコ蛋白の血中濃度に着目し, この物質の外科的侵襲による増量の生理的意義及び産生機序について解明すべく本研究を企画した. 家兎を用い, 各種麻酔剤(基礎麻酔, 静脈麻酔, 腰椎麻酔)を投与して血清ムコ蛋白に対する麻酔剤の影響を観察した. 腟式及び腹式子宮単純全摘除術患者33例につき, 術前より術後10日に亘る本物質の変動を連日測定して観察した. 以上の中28例につき, 同時に尿中カリウム排泄値, 末梢血好酸球数, 尿中17-OHCS排泄値を測定した. 子宮筋腫術前患者7例にACTH25単位筋注投与し, 血清ムコ蛋白と好酸球を測定し下垂体副腎皮質系との関連を検索した. 又3例に5%ブドウ糖液500mlを投与してムコ蛋白を測定, 腟全摘17例, 腹全摘7例につき術後の血清蛋白像(血清総蛋白, アルブミン, グロブリン)と両術式群共5例ずつにつき血清蛋白分画を測定した. 実験成績 血清ムコ蛋白は麻酔剤投与後, 少くとも24時間以後では影響を受けていない. 手術侵襲による本物質の変動は, 術後早期に反応を呈し, 術式によりその動態は異り, 腟全摘群に於いてその増加は少い. Peak出現の時期に術式間で若干の差があるが両群共に2つのPeakを描いて消長する. 尿中カリウムの術後の変動は術日に最高値を示して増減し, 腟式群は術後1日目, 腹式群は3日目より術前値以下となる. 好酸球数は術後早期に急減し漸次復帰する. 尿中17-OHCSは術後2つのPeakを示して増減, その動きは血清ムコ蛋白と相関を有する. ACTH負荷による血清ムコ蛋白の動態には, 一定の方向が認められない. 血清蛋白像の変動では, 総蛋白の逐日的減少, グロブリンの一過性の増量を認めた. 血清ムコ蛋白は間葉系特に結合組織由来の物質であり, 生体防禦反応の一つである結合組織の反応の態度を示す指標であると考える. 本物質の増量は組織の破壊増殖, 特に障害も受けた組織の修復過程に於いて認められる. 生体にStressが加った時本物質はAcute Phase reactantsとして反応を呈するが, この反応機構は下垂体副腎皮質系とは別個に独立したものと考える. 婦人骨盤臓器摘出に際し, 腟式が腹式経路より組織損傷が小であると云う面で優れている事を, 本物質の変動を介してうかゞえた.
- 社団法人日本産科婦人科学会の論文
- 1963-10-01
著者
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