妊婦血, 臍帯血, 新生児血および羊水中 α-fetoprotein に関する研究
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概要
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1956年 Bergstrand (1956) により, 胎児性蛋白の一種である α-fetoprotein (以下AFPと略) が発見されて以来, 原発性肝癌患者血清中に本蛋白の証明がなされ, 現在では本蛋白の証明は原発性肝癌, 胎生癌の有力な一診断法となりつつある. radioimmunoassay 法, single radial immunodiffusion 法を用い, 妊婦血, 臍帯血, 新生児血及び羊水中のAFPについて, その測定を行ない, 以下の結果を得た. 1) 妊婦血清AFP値は妊娠3ヵ月末頃より, その出現がみられ, 妊娠5ヵ月以後では全例その存在がみとめられた. その後, 妊娠経過の進行に伴い, 妊婦血清AFPの増加がみられ, 妊娠9ヵ月最高値 (170±90.3ng/ml)に達し, その後減少がみられた. 2) 異常妊娠中, 胞状奇胎では, 妊婦血清AFPはみとめられなかった. 又, 切迫流産患者中予後不良なものに低値を示すものを多くみられた. 併し, 中に極端に高値を示すものがみられた. 妊娠中毒症では比較的低値を示すものを多くみとめた. 一方, 子宮内胎児死亡例では極端な高値がみられた. 又, 双胎では正常妊娠よりやや高値, 無脳児妊娠では正常との間に差はみられなかった. 3) 臍帯血血清AFP値は妊娠の進行に伴い, 減少がみられた. 又妊娠末期に於ける臍帯血血清AFP濃度と母体血血清AFP濃度とは強い相関がみられた. 更に, 妊娠中毒症等で胎児状態が障害されたものでは低AFP値を示した. 又無脳児では正常群との間に差はみられなかった. 4) 羊水中AFP値は妊娠初期では極端な高値を示し, その後減少傾向がみられ, 妊娠後期に於ける減少は, 臍帯血清のそれよりも急激であった. 無脳児妊娠, Rh不適合妊娠重症感作例では正常妊娠同期に比して高値を示した. 5) 新生児血清AFP値は, 生後減少がみられ, 成熟児, 巨大児では生後7日目で, 生下時の各々38.3%, 40.0%となるのに反し早産未熟児89.2%と, その減少は緩慢であった. 又SFD児では57.1%と同体重の早産未熟児に比べ, その減少は急激であった.
- 社団法人日本産科婦人科学会の論文
- 1974-03-01
著者
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