胎児発育過程における血中脂質の変動に関する研究
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概要
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胎児の体重増加や蓄積脂肪の増加が妊娠中期以後に著るしくなる事, 及び母体の高脂血症が妊娠中期以後に著明となる事などにより, 妊娠中期以後の胎児は大きな脂質環境の変化をきたすと考えられる. この点に注目し, 妊娠6カ月から予定日超過に至る迄の経腟分娩出生児の臍帯血を採り, 各脂質分画の定量を行なうと共に, 各脂質分画における脂酸構成をガスクロマトグラフィーにより分析し, 胎児の発育に伴う血中脂質の変動を検討した. 妊娠6カ月から妊娠7カ月の間に臍帯血中の燐脂質の有意な増加がみられたが, この時期における胎児の細胞増殖を反映するものと思われる. その後は臍帯血中脂質からみると, 量的にも質的にも安定した状態が続くが, 妊娠33週から妊娠38週にかけて燐脂質, 中性脂肪, 遊離脂肪酸, コレステロールエステルのすべてにおいて C_<20:4>/C_<18:2> の増加がみられる様に, 胎児にとつて有利な活性必須脂肪酸へと合成をすすめ, 子宮外生活への準備を行なつているものと思われる. その後妊娠38週を過ぎると胎盤における脂質合成能が低下すると考えられ, C_<20:4>/C_<18:2> が低下を示す. 唯主たる脂肪合成系である Malonyl CoA 系, 鎖長延長系の比率は, 妊娠6カ月以後満期産児に至る迄一定に保たれている様である. 妊娠42週を過ぎるとこの合成系にも乱れが生じ, C_<20:4> の減少とC_<18:2> の増加にみられる様に, 脂肪酸の酸化による蓄積脂肪の消費が起つてくるものと考えられる. 妊娠42週以後のこういつた変化は, 胎児血中においてはまず F.F.A. に, 次いで T.G. に強く現われ, 細胞生命に密接な関係を有する P.L., Ch-E は比較的安定した状態を保つものと考えられる. 又妊娠末期から予定日超過に至る間の一連の必須脂肪酸の動きは, 胎児・胎盤系としての代謝相関の可能性を示唆するものと思われる.
- 1973-05-01
著者
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