ヒト胎児下垂体前葉細胞の電顕学的研究
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
下垂体前葉の電顕学的観察は, 従来主として, ラット, マウス, ウサギ, 犬, 牛, その他を対象としており, ヒト下垂体前葉のそれは極めて乏しく, とくにヒト胎児のそれについては未だ系統的観察報告をみることができない. よつて著者はヒト胎児下垂体前葉を電顕的に観察して, その細胞を6型に分類し, 以下の所見を得た. 1) 細胞の分類基準としては, 細胞の外形, 大きさ, 電子密度, および細胞内小器管, 特に小胞体の形態, 所在と分布, 分泌顆粒の外形, 大きさ, 電子密度, 内部構造, 所在と分布等を目標とした. 従来の知見から考按すると, I型細胞は成長ホルモンを分泌し, II型は甲状腺刺激ホルモン, III型は副腎皮質刺激ホルモン, IV型は卵胞刺激ホルモン, V型は黄体形成ホルモン分泌と関係するものの如く, またVI型はホルモンの分泌を営まない未分化な細胞である. 2) 6型の細胞の逐月推移は, I〜IV型は妊娠3ヵ月ですでに出現しているが, その特徴は未だ明瞭でなく, 分化の過程にあるが, 4ヵ月でほぼ完全なものとなり, V型細胞も4ヵ月以降観察される様になる. VI型細胞は各月共に認められ, その出現頻度は逐月的に減少する. 3) 上記の各型細胞は, それぞれ発生学的展開を示しつつ, 前葉の組織発生学的形態の一部となつていることを下垂体の逐月所見から確かめることが出来た. 4) 上記の所見より, ヒト胎児下重体前葉細胞は電顕像からもすでに妊娠3ヵ月以前からその内分泌的機能を開始し, 妊娠4ヵ月にその分化をほぼ終ることを確認することができた.
- 社団法人日本産科婦人科学会の論文
- 1972-05-01
著者
関連論文
- 96. Radioreceptor assayによる活性型Oxytocinの定量と分娩時血中動態 : 第21群 内分泌・末梢III
- 細胞表層荷電密度の変化よりみた子宮内膜異常増殖の病態 (子宮内膜異常増殖の病態)
- 母児相関よりみたホルモン生成代謝とその臨床的意義に関する研究
- 47. ヒト胎児肝に於ける血球発育過程にみられる形態的変化
- ヒト胎児下垂体前葉細胞の電顕学的研究