ラットに於けるエストロジェンの黄体維持作用に関する研究
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概要
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著者はラツトに於けるエストロゲン(E)の黄体維持作用に着目し,その作用機序を明らかにすることによりラットの黄体機能調節機序の一端を解明し得ると考えて以下の3実験を行つた. (1) ラットの発情期を示す日からエストラダイオールベンゾエイト(E.B.)の連日背部皮下注射をしたところ3週間以上連続非発情の続いたラットでは卵巣に活性黄体が認められた.このことはE.B.により黄体が活性化されprogesteroneが分泌されていたことを示している. (2) ラット視床下部にE.B.の結晶を植込んだところ視束交叉上部への植込み群と中央隆起部への植込み群とでは子宮と卵巣重量の間に著しい逆関係が認められた.また前者では卵巣には活性黄体は認められず乳腺でも乳汁分泌は認められなかつた.後者では活性黄体,腟のムチン化,並に乳腺の乳汁分泌像が認められた. この結果中央隆起部ではEの作用によりprolactin分泌が昂進し黄体機能が長期間維持されるが視束交叉上方ではEの作用によつて下垂体からの周期的LH分泌を抑制しているが下垂体からのprolactinの分泌は促進させないことが判明した. (3) 視床下部及び中央隆起部を破壊したラットを術後7-14日目にHCGで人工的に排卵させE.B.を連日皮下注射しEの黄体に対する維持作用を検討した.視床下部前部破壊群では2週間以内に持続発情になつたが中央隆起部破壊群では3週以上の連続非発情が認められた. このことから視床下部前部破壊ラットではEによりprolactin分泌は促進されるがLHの分泌は完全には抑制出来ないため黄体の生理的限界である2週間以上は持続し得ないが正常ラット及び中央隆起部破壊ラットではEによりLH分泌が抑制されprolactinが分泌され生理的限界を越えて黄体が維持されると考えられる.以上のことからEは中枢に作用して黄体機能を長期間維持させるがそのためには前視床下部がintaktであることの必要性が示唆された.
- 社団法人日本産科婦人科学会の論文
- 1971-06-01
著者
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