妊婦腟内容の細胞学的研究

概要

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腟内剥離細胞は体内の性ホルモン動態をよく反映するとされているが,ホルモン環境の大いに変化する妊娠時の腟内剥離細胞の変化についての研究は比較的少ない. 私は正常妊娠,異常妊娠,妊娠末期など一連の妊娠時における腟内容の細胞学的検索を行ない次の様な結果をえた. 正常妊婦の妊娠各週における核濃縮係数(K.I.),好酸性係数(A.I.),Smear Index(S.I.)はいずれも妊娠初期に高値を示すが,妊娠5ヵ月に至り下降し,以後低値を保ち妊娠末期に至り上昇する傾向を認めた.妊娠初期の異常のうち切迫流産例ではK.I.,A.I.,S.I.の高いものが多く,また3係数が高いもの程流産率が高く,連続的に追跡した場合,妊娠の継続例では下降するものが多いが,流産に終つた例では上昇した.子宮外妊娠および胞状奇胎ではやゝ高い値を示したものが多かつた.妊娠後半期の異常のうち妊娠中毒症例ではK.I.は標準偏差より高いものが多く,A.I.は大部分標準偏差内に,S.I.は低値を示したものが多く,重症追跡例中子宮内児死亡を来した例では3係数の急激な増加をみたが,生児をえた例では標準偏差内にとどまつた.子宮内胎児死亡例ではK.I.,A.I.とも標準偏差を上廻るものが多く,S.I.では半数に著明な上昇をみた. 妊娠末期においてはK.I.,A.I.は分娩前10日以内より漸次上昇し,2日前より急上昇を,S.I.は3〜5日に明らかな上昇を認めた.Miklau分類に従つた分娩予知の確診率はI型で81.5%,II型62.0%,III型52.7%,IV型71.2%と或る程度予知が可能と考えられた.予定日超過例の分娩日より逆算した3係数の変動はほぼ正期産と同様な傾向を示したが,分娩2日前においてK.I.は正期産の如き急上昇はみられず,またS.I.はやゝ著明な上昇を認めた. 腟細胞像の検索はホルモン定量より簡便迅速な検査法であり,殊に連続的に検索した場合異常妊娠の予後,治療評価および分娩予知などの1つの指標となりうるものと考える.
社団法人日本産科婦人科学会の論文
1967-09-01

妊婦腟内容の細胞学的研究

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