更年期障害に関する臨床的研究
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概要
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80例の更年期障害の患者の臨床症状を検討し, 更に所謂間脳下垂体機能検査を行ない, 次の様な結果をえた. 又併せて更年期障害の発来機序について推論した. 1. 臨床症状は, (1) 性周期の変化, (2) 体重の変化, 心臓血管症状, 内分泌症状, 精神神経症状に分けられるが, 性周期と変化をみる可成り以前から (2)以下の愁訴を訴えるものが少ない. 対象80例中15例はその様な例である. 2. 内分泌症状を訴えたものは80例中69例で86.2%であり, 心臓血管症状は全例にみられる. 内分泌症状の頻度は欧米の報告に比べて可成り高いといわざるをえない. 3. 臨床症状相互の間に次の如き傾向がある. 即ち過多月経群では重症の心臓血管症状を訴えたものは17例中7例, 体重は17例中10例が減少している. 之に対して稀発月経群では重症の心臓血管症状を訴えたものは28例中3例にすぎない. 体重は13例が増加, 3例が減少した. 4. 臨床症状は体質に支配され, 細長型, 無力細長型は重症の心臓血管症状を訴えたもの11例中7例, 全例が過多月経で, 間脳機能検査は7のうち4以上が Reiz-T. を示したものは11例中9例である. 之に対して肥満型は心臓血管症状は23例中17例が軽症で19例が稀発, 過少月経である. 間脳機能検査7のうち4以上が, Starre-T. 又は正常のものが23例中16例である. 5. 肉体的条件に変化があると同一婦人が軽症型, 重症型臨床症状の両者を経験する. 即ち臨床症状は体質, 自律神経の律動的変動および不安定, 身体的条件に支配される. 更年期障害の発来機序にとって卵巣機能の廃絶が大きな役割を演ずることは否めないが, 去勢群, 正常性周期群のそれを説明するには, 女性の更年期における卵巣機能以外の内分泌環境の変化が誘因となると考えなければならない.
- 1970-05-01