妊娠時に見られる下肢痙攣に関する研究
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概要
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私は今迄に妊娠時妊婦は内因性のCa欠乏状態に陥っているという事,又妊娠4カ月よりCa含有製剤を投与する事により内因性のCa欠乏状態を防止する事が出来るという事を報告したが,このCa欠乏状態の臨床的に持つ意味については不明な点が多い.そこで私は妊婦に見られるleg cramp即ち下肢痙〓の概念及びそれとCaとの関係について検討を加え次の結果を得た.1)leg crampは妊婦の32.3%に認められ経産掃に幾分多い.大部分は妊娠7ヵ月以降に発現し産褥には1例も発現していない.2)1eg crampは2〜3日間隔で起るものが最も多く,大部分はcrampと共に激しい疼痛を訴えている.3)大部分は深夜から明け方にかけて発現しているが,両側腓腸筋に同時に起るものは少ない.4)leg crampを訴える妊婦にCa製剤の静注を行なうと,全例著効を示し,大部分は静注開始後2〜3日目に効果の発現を見ている.5)Ca製剤内服群では全例著効又は有効を示し,治療効果は内服開始後3週間以内に現われている.6)1eg crampを訴える妊婦の血清総Ca濃度の変化は正常妊婦のそれと著差を見ないが,尿Ca/Creatinineはより低値を示す.7)Ca製剤投与群の内,著効例では血清総Ca濃度及び尿Ca/Creatinineの著明な増加を認める.有効例では血清総Ca濃度の軽度上昇と尿Ca/Creatinineの明らかな増加が認められる.8)Ca製剤投与群43例中,投与中止後4例に再発を見たが,Ca剤の再投与によりいずれも症状は消失した.そして血清総Ca濃度より尿Ca/Creatinineの変化に再発との相関関係が明らかに認められた.9)妊婦に見られるleg crampは妊娠時Ca欠乏状態が原因であると考えられ,血清総Ca濃度よりもむしろ尿Ca/Creatinineの変化を追跡する事によりleg crampの消長を知る事が出来,従ってその治療又は予防を行なう事が出来るのではなかろうかと考えられる.
- 社団法人日本産科婦人科学会の論文
- 1967-05-01