Ca含有製剤投与と妊娠時Ca代謝に関する研究
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概要
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第1編で妊娠,産褥時の血中総Ca濃度測定,1日尿中排泄総Ca量と共にCa負荷試験を行い,妊婦は特別に臨床症状を現わさなくても内因性のCa欠乏状態に陥つている事,及び〓帯血,母体血Ca濃度より胎児は母体のCa欠乏状態の有無に拘らずCaの取り込みを行うのではなかろうかという事実を報告したが,本編では,種々Ca含有製剤を妊婦に連続投与し,内因性のCa欠乏状態に対する影響,Ca製剤の投与方法,投与開始の時期,投与Ca剤の種類等に検討を加え,次の結果を得た.(1)妊娠6ヵ月以降の投与群では,いずれも投与後2〜3週目より血中総Ca濃度の上昇が見られ,尿Ca/Creatinineは1週後よりすでに増加が見られる.(2)妊娠4ヵ月以降の投与群では前者に比べ血中総Ca濃度,尿Ca/Creatinine共に投与後4週目の値で高値を示す.(3)妊娠6ヵ月以降の投与群では血中総Ca濃度,尿Ca/Creatinineの低下をある程度防ぐ事が出来る.又それらの産褥期の回復も非投与群より速かである.(4)妊娠4ヵ月以降の投与群では血清総Ca濃度,尿Ca/Creatinineはいずれも非投与群や妊娠6ヵ月以降の投与群に比べて高くむしろ非妊婦に近い値を示す.(5)Ca製剤投与による血清イオン化Ca濃度の変化は,妊娠,産褥期共に殆んど認められない.(6)Ca製剤投与による腎細尿管Ca再吸収率の変化は見られない.(7)非投与群では〓帯血総Ca濃度は母体血のそれより高いが,投与群では両者に差が見られない.イオン化Ca濃度は非投与群と比べ著差は見られず,非妊婦値に比し高値を示す.(8)Ca製剤を連続投与した妊娠10ヵ月妊婦,褥婦に負荷試験を行うと,非投与群に比べいずれも非妊婦に近い曲線を示す.(9)投与Ca剤の種類では無機Ca及び炭酸Ca投与群で幾分良好な成績を得た.その投与量としては,日本人妊産婦の常食に1日0.5gr程度のCaを補ってやれば良い事になる.
- 社団法人日本産科婦人科学会の論文
- 1967-01-01