最近の産褥熱について
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概要
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産科領域感染症の代表的疾患である産褥熱は予防医学並びに化学療法の発達により重症例発生頻度の低下がみられるが,臨床病態のうえで近年かなりの変貌を認める.著者は最近の産褥熱感染像(主として子宮内感染症)を,起因菌(子宮内細菌検索に基づく)の立場から分析,検討を試みた. 1)合併症に基づく発熱を除き,無熱群,微熱群(37.5℃以下),37.5℃以上の軽熱群,38℃以上の4群に分けて早期褥婦子宮内細菌検索を行なったが,子宮内細菌検出率は軽熱群と38℃以上の群との間に余り差がみられず,しかも高率であった.従って熱型上37.5℃以上(2日間以上)を呈するものを産褥子宮内感染症とすることを提唱した. 2)起因菌にも変遷がみられ,頻度の上で嫌気性菌が最も多く,好気性菌では往時の代表的な原因菌であったA群レンサ球菌は証明されず,代ってブドウ球菌,ダラム陰性桿菌が多く認められた. 3)起因菌の各種抗生剤に対する感受性試験の成績では嫌気性菌を除き,耐性菌が比較的高率である. 4)子宮内感染症,重症敗血症型産褥熱の臨床像と化学療法に検討を加え,菌種別による病型の特徴をうかがうことができたほか,難治な強菌力菌感染(80/81 Typeのブドウ球菌等)や,かなり高率にみられる弱菌力菌感染(腸球菌,A群以外のレンサ球菌等)の意義を強調した. 5)子宮内検出菌と腟内細菌を比較すると,38℃以上の症例の腟内よりは子宮内起因菌と同種の菌種しか検出されない傾向がみられる. 6)発症時期については特に著しい季節的変動は認められない.また本症の誘因の1つとみなされる分娩時の機械的操作および合併症をみる例では子宮内での有菌率が高い. 以上の実験結果から化学療法時代の今日といえども本症を生起する機会が少なくないこと,感染像や起因菌の変遷,耐性菌の増加傾向等,幾多の新知見を指摘できた.
- 1967-05-01