血行性腫瘍転移に関する実験的研究 : ラツト腹水肝癌尾静脈内移植による
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概要
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実験的に腫瘍細胞を血行性に撒布させ,血行性転移の機序を解明しようとする試みはLevin及びSittenfield以来数多い.最近移植性腫瘍を用いて実験を行う場合,移植する腫瘍と移植される動物の両者について充分吟味された材料を用いることの重要性が強調されているが,60数系のラツト腹水肝癌は形態学的性質をはじめとして,生物学的性質の調査が充分なされ,またDonryu-ratも遺伝的に比較的均一なことが知られている.共通母細胞に起源する一連の腹水肝癌をDonryu-ratの尾静脈内に注入移植し,各腫瘍系の全身諸臓器への転移形成能を比較して,血行性転移に関する基礎的知見を得た.(1) 尾静脈内に注入された腫瘍細胞が肺に定着して増殖するか否かは,腫瘍の形態学的性質よりもむしろ細胞自身の有するvirulenceの強さが関連するものと考えられる.(2) 肺下流の諸臓器への転移は,概して肺腫瘍増殖巣からの腫瘍細胞の遊離性及び肺血管通過性が容易と考えられる単離の腫瘍細胞の多い系に高い.(3) 臓器別に転移頻度を比較すると,肺を除けばリンパ節(縦隔洞,後腹膜,腸間膜),副腎,肝臓,卵巣に高く,胃,小腸,大脳に低い.睾丸には1例の転移も認められなかった.(4) 肺における腫瘍の初期増殖部位は,主として肺毛細管部或いは気管支や比較的大きな血管周囲の間質内に認められた.これ等の増殖部位と腫瘍細胞の性質との関連性を検討した.
- 1967-03-01