妊娠中毒症のNoradrenalineに対する血管収縮反応性に関する研究
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
妊娠中毒症の高血圧の発来にも, 昇圧物質の増量や血管感受性の亢進が重要な役割を演じている事に疑いはない. 又本態性高血圧患者と同様, 妊娠中毒症患者の多数例に, カテコールアミン (CA), なかんずく, ノルアドレナリン (NA)に対する血管感受性の亢進が報告されている. 著者は妊娠中毒症を中心として, NA点滴静注法を用い, その血管収縮反応性を検討し, 更に, 体内ナトリウム (Na)の動きとの関係について指尖容積脈波の変動等, 種々の面から考察を加え, 次の如き成績を得た. 1) 正常妊婦のNA反応性は妊娠中期頃遼は正常非妊婦と差はないが, 妊娠第35週頃より亢進を示し始め, 末期に至りピークに達し, 少なくとも産褥1週間はその状態が持続する. 2) 妊娠中NA反応性の亢進を示す例には, 検査後中毒症や産褥期高血圧症を発症する頻度が高い. 3) NA昇圧値は中毒症では妊娠中でも分娩後でも対照群に比し, 有意に高値を示す. しかし, 多くの例が分娩後1年ないし1年半以内には正常値に戻る. 4) NA反応性の亢進例では非亢進例に比し血管恋縮傾向の強い事が, 同時に施行したプレチスモグラフィーで, その波型の復元時間の延長から示唆された. 5) 正常妊婦に対し食塩負荷, あるいは減塩, 脱塩を行ない, 尿中Naとのbalance-studyから, NA反応性は体内Naの増減にほぼ平行する傾向がみられた. この事実はNaの血管感受性への関与を示唆するものである. 以上の成績から, 本検査は中毒症の予知法の1つとして応用し得, 既往に中毒症を経過した症例に対しては, 主として高血圧遺残を中心とした予後の判定に有用であり, 更に次回妊娠時の中毒症再発ないし増悪に対する予測を可能ならしめる手段の1つとして, 腎生検等と共に有力視されるであろう. 更に減塩ないし脱塩が中毒症の予防や治療にかなり重要な位置を占めるものである事をも知り得た.
- 社団法人日本産科婦人科学会の論文
- 1967-12-01
著者
関連論文
- 126.妊娠中毒症後遣症に対する新しい検討(第2報)
- 示34. 妊娠中毒症に於ける昇圧因子について : Noradrenaline(NA)に関する検討
- 190. 妊娠中毒症後遺症の綜合的検討
- 96. 妊娠中毒症におけるNA及びAの消長と血管収縮反応性について
- 96.妊娠中毒症におけるNA,及びAの消長と血管収縮反応性について
- 126.妊娠中毒症後遺症に対する新しい検討
- 133. 腎生検からみた妊娠中毒症後遺症
- 199. 産婦人科領域に於ける超音波診断の応用
- 55. 分娩後特発性心不全と妊娠中毒症 : 自験例を中心として
- 239. 胎児及び新生児死因に関する臨床病理学的研究(第4報)
- 28. Clomiphene投与時のSmear Index の変動(第5回総会講演要旨)
- 27.人腟脂膏の内分泌学的研究 : 第5報 去勢婦人と閉経期婦人のSmear Index の比較(第5回総会講演要旨)
- 16. 人腟脂膏の内分泌学的研究 第4報 : 去勢婦人の術後経過より見た Smear Index(各種治療経過と細胞診(1) , III シンポジアム , 昭和38年度秋期大会講演要旨)
- 186. 胎児及び新生児死因に関する臨床病理学的研究(第5報)
- 106. 経鼻投与によるオキシトシンの効果について
- オキシトシン経鼻投与に関する研究
- 216. 婦人科手術と心電図 : 心筋障害所見を中心として
- 妊娠中毒症のNoradrenalineに対する血管収縮反応性に関する研究