合成gestagensの線維素溶解現象に及ぼす影響
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概要
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生理的な出血である月経,並びにその乱調なかたちである機能性子宮出血は,性ホルモンと密接に関連して発症するが,その出血,止血機序については判然としていない.近年合成gestagensの出現により,機能性子宮出血の治療は95%以上という優れた止血効果が挙げられているにもかかわらず,その止血機序も解明されていない.著者は合成gestagensによる機能性子宮出血の止血機序を解明するため,合成gestagensが中枢の性機能以外に,末梢に対して,殊に末梢の凝血学的因子に対して如何なる影響を及ぼすかを検討し,合成gestagensには,本来の性ホルモンとしての作用の他に,線溶能を阻止する作用をも有する事を知つた.即ち,機能性子宮出血患者の血液凝固能,並びに線溶能を測定し,機能性子宮出血患者は正常性周期婦人に比して子宮の線溶能,即ち子宮内膜組織plasminogen activator活性が著明に亢進しており,この線溶能の亢進が機能性子宮出血の出血機序と密接な関連があること,次に,この亢進した線溶能は合成gestagens投与により著明に抑制されることを知つた.合成gestagensのplasminogen activatorに対する抑制は,末梢血中においても認められた.しかし,これらの抑制は,機能性子宮出血治療の如く,合成gestagensを大量に用いた場合に著明であり,経口避妊の如くgestagensの1日投与量が少い場合には,さほど著明には認められなかった.合成gestagensの線溶阻止能は動物実験,並びにin vitroの実験においても確かめ,その抑制は合成gestagensの投与量に応じた抑制,即ちdose-dependentな抑制であった.一方,従来より機能性出血の治療にはestrogen製剤も好んで用いられているが,estrogensについても動物実験,及びin vitroの実験で,合成gestagensと比較検討したが,著明な線溶能抑制は認められなかった.以上のことから,合成gestagensには,本来有する性ホルモン作用の他に明らかな線溶阻止能のあることを結論し得た.
- 社団法人日本産科婦人科学会の論文
- 1967-11-01
著者
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