子宮筋に於ける高エネルギー燐酸化合物の研究
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概要
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子宮収縮を行うためには,収縮蛋白,電解質とともにその動力源となるエネルギーが必要であり,このエネルギーの担体としてのAdenosine triphosphate,貯蔵体としてのCreatine phosphateという観点から,この両者は重要視されている.この高エネルギー燐酸化合物レベルは妊娠により,また性ホルモン投与により動揺することが知られている. この様な問題が取り上げられたのは近年になつてからであるが成績に不一致な点が多い.この事は燐酸化合物の分画と定量法に問題があつたためと考えられる.著者はこの点に留意し子宮の妊娠,分娩という状態変化に伴う高エネルギー燐酸化合物の動態と,性ホルモンとの関連について考察を加えた. 燐酸分画定量法としては高橋法を用い,Creatine phosphate及び7 minutes hydrolysable-P (Δ7p)を測定した.実験動物としては家兎を使用,更にヒトからも試料を得て実験を行つた. 家兎子宮筋の高エネルギー燐酸化合物は妊娠によつて増加する.妊娠末期の増加が著明で非妊時の約3倍に達し,分娩後は約1週間で非妊時の値に戻る. ヒト子宮筋でも妊娠すると増量し,妊娠末期には子宮下部は1.5倍,体部2〜2.5倍に増加している.このことは子宮筋の機能状態とも関連づけて考え得る. ヒト子宮筋では陣痛の有無による変化は認められなかつた.また胎盤附着部は非附着部に比し,家兎及び,ヒトにおいても少ない. 去勢家兎にEstrogen又はProgesteroneを投与すると,高エネルギー燐酸化合物は増量するがEstrogenに比しProgesteroneの作用は弱い. EstrogenとProgesteroneとの両者併用では,その増強作用ぱEstrogen単独よりも強いが,Progesteroneが過量になるとかえつて減少する. この両ホルモンは一面では協同的に,又一面では拮抗的に働き,妊娠の持続のために合目的に働くものと思われる.
- 社団法人日本産科婦人科学会の論文
- 1967-01-01
著者
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