新生児呼吸中枢機能検査法に関する研究
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概要
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新生児呼吸生理, 殊に呼吸中枢機能検査法は未だ確立されておらず, 成人でも確実な方法は無い. 著者は呼吸中枢機能検査法を開発するためCO_2に対する呼吸中枢の反応性を観察する実験を行つた. 今日, 呼吸中枢の感受性試験に最も多く用いられている方法はCO_2刺激に対する呼吸, 特に換気量の変化による評価であるが, ガス供給にmaskを使用したり, 換気量測定にbody plethysmogrhph或いはreverse plethysmographyを用いることは児の安静が得難く, また死腔抵抗増大による負担が加わる. そこで著者は児をplastic製箱に収容し, 箱内CO_2濃度を連続的に変え, それに伴う呼吸変化を食道内圧曲線により測定し, 児への無用の刺激や負担を避けることが出来た. 実験成績からは食道内圧差(ΔP)と分時呼吸数との積を仮に分時圧量と名づけ, 各CO_2濃度下の分時圧量/空気中での分時圧量=分時圧量増加率とし, 又各CO_2濃度下のΔP/空気中でのΔP=食道内圧差増加率(ΔP増加率)とするとき, これ等の値の増加態度から呼吸中枢の反応性を2.5%CO_2での分時圧量増加率が1.5倍以上のものを反応良好とし, 更にA_I, A_<II>, B, C, Dの5種に分け, 判定基準として用いた. C, D類は反応不良類である. また空気中での分時圧量が1000mmH_2O/min. 以上, 400mmH_2O/min, 以下なるものは, それぞれhyperventilation, hypoventilationと考えられ, 反応不良類の中にも, 空気中でhyperventilationであるものとhypoventilationであるものとあり, 前者は呼吸中枢の反応余力の減少, 後者は反応能力の低下によるものと考えられる. 従つて我々の判定基準により呼吸中枢の反応性を判別するとともに反応不良類については, 空気中での呼吸状態と2.5%以上のCO_2濃度に対する反応性から, 呼吸中枢の反応余力減少によるものか, 反応能力低下によるものか判別することが出来る. 更に数回検査することによつて新生児呼吸障害の予後を判定することが出来る.
- 社団法人日本産科婦人科学会の論文
- 1966-04-01