銅塩のLH分泌に及ぼす影響
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概要
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銅塩は家兎では排卵を,ラットでは偽妊娠を惹起することが知られているが,その詳細な作用を知るために,銅塩投与による血中および下垂体中のLHの変動,および下垂体incubation実験における銅塩添加のLH活性におよぼす影響について検討し次のことが判明した. 1) 成熟雌ラットでは排卵直前のproestrusに下垂体中のLHは最高値を示し,血中のLHは最低値を示した.又estrusでは下垂体で最低,血中で最高を示した. 2) 銅塩そのものは幼若ラットの卵巣アスコルビン酸含量に影響を与えない. 3) 銅塩は成熟雄ラットの下垂体,血中LH量に変化を与えない. 4) 発情期の雌ラットに銅塩を投与して偽妊娠をおこすと,下垂体中のLHは漸次増加するが,血中LHはむしろ低下の傾向を示す. 5) ラットの自然妊娠の下垂体LHは12〜18日目で最高となつた. 6) 成熟雌家兎に銅塩を投与すると,15分後より下垂体中のLH含有量は著明に低下し,1〜3時間後に最低値を示して以後は徐々に増加した. 7) 雄ラットの下垂体を用いてのincubation実験で,銅塩は下垂体よりのLHの放出を促進しないが,視床下部も同時に加えた場合はLHの放出を促す傾向にある. 8) 雌家兎の下垂体を用いてのincubation実験では銅塩は下垂体よりのLHを放出さす傾向を有し,視床下部を同時に加えた場合,適当量の銅塩はLHの放出を促進するが,大量では減少さす. 以上のことから,銅塩はin vivoにおいては,ラットでは下垂体からのLHの放出を抑制し,家兎ではLHの放出を促進し,またin vitroでは,ラットではLH放出を促進はせず,家兎では適当量でLH放出を促進さすことが判明した.
- 社団法人日本産科婦人科学会の論文
- 1969-10-01