肥満婦人の水分代謝に関する研究
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概要
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肥満症の病因や病態整理の解明上や治療上に,水分代謝異常は,古くから重要な研究課題とされているが,未だ充分解明されていない.著者は,肥満症患者に於ける水分代謝異常を窺知する目的で,42名の婦人の体水分量(体送水分量,細胞外液量,血漿量,組織間液量,細胞内液量),Lean Body Mass(L.B.M),体脂肪量等を測定し,絶食療法中の肥満婦人3例について,水分代謝に検討を加え,次の成績を得た.各体液量,L.B.M.,体脂肪の絶対量は肥満度の上昇と共に増加したが,体重比は体脂肪を除いて他は凡て減少した.特に,細胞外液中の血漿量は,肥満者と非肥満者では差が小さく,従つて体重比は著しく減少した.これに反し,組織間液量の体重比は他の体重液量の場合と異り,著明な減少傾向を示さなかつた.また,肥満者では体脂肪のみならず,L.B.M.も増加していることが判つた.絶食中の体重減少は,その初期に著明で,日時の経過と共に減少したが,体水分量も減少した.復食時には,顔面,四肢に浮腫を認めることが多く,体重は再び増加し,組織間液量の増加がみられた.絶食療法の体重変動は,体水分の変動と平行していることが判明した.血清Na及びClは,絶食中に減少し,復食で再び増加した.尿中Na及びCl排泄量も,絶食中に減少し,復食で増加した.復食時の水分瀦溜に対して利尿剤を投与し,体重減少及び体水分減少がみられたが,血清電解質異常はみられず,復食時の体水分増加には利尿剤を投与しても良いと考えられる.肥満者では,体重当たりの体水分量は少なく,中でも血漿量の著減が特徴的であり,この為腎血流量も減少し,aldosterone,ADHの分泌亢進を招き,水分瀦溜による浮腫,乏尿などの臨床症状が出現するものと考えられる.従つて,肥満症治療法としての脱水療法は,特殊な例を除いて,却つて水分代謝の不均衡を招来することになり,好ましくないと考えられる.
- 1969-01-01
著者
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