分娩時母体体位の胎児所見に及ぼす影響に関する検討
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概要
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産婦を無作為に封筒法により、仰臥位分娩群と座位分娩群にわけ、両群間で胎児心拍数図の定量的分析、Apgarスコア、臍帯動脈血ガス分析値カテコールアミン値、出生5分後の新生児心拍数などを比較検討して、胎児環境への母体体位の影響について検討した。対象は妊娠36〜41週の産婦148例で、仰臥位分娩群81例(初産婦35例、経産婦46例)、座位分娩群は67例(初産婦25例、経産婦42例)であった。胎児心拍数と陣痛は分娩監視装置で、外測法により得た信号を自動診断補助装置に入力し解析した。臍帯動脈血ガス分析には全自動Radiometer ABL-2を使用した。臍帯動脈血カテコールアミン値は無作為に25例を選び、高速液体クロマトグラフィーによるTHI法を用いて計測した。その結果は次のとおりであった。 1) 分娩時間に差はなかったが、吸引分娩は座位分娩群に低率であった。低Apgarスコアの新生児仮死は、仰臥位初産婦で3例(8.7%)をみ、座位初産婦群では1例もなかった。 2) 臍帯動脈血ガス分析値は初産婦では差はなかった。経産婦では仰臥位分娩群が有意に好結果であった。臍帯動脈血カテコールアミン値は座位分娩群に低い傾向がみられた。出生5分後の新生児心拍数は、仰臥位分娩群に180以上の頻脈が多くみられた。 3) 分娩前2時間の胎児仮死指数最高点3点以上は、仰臥位初産婦群が4例(11.4%)、仰臥位経産婦が3例(6.5%)に対し、座位初産婦群は1例もなく、経産婦群も1例(2.4%)であった。胎児心拍数スコアは分娩各経過時間で、座位分娩群に低い傾向をみた。胎児心拍数基線、心拍数細変動はいずれも座位分娩群に良い傾向がみられた。総合的に座位分娩に良い胎児の環境としての傾向がみられたが、各所見の優位な統計学的有意差はみられなかった。
- 社団法人日本産科婦人科学会の論文
- 1987-06-01
著者
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