胞状奇胎間質部に於けるα-fetoprotein 陰性の意義

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胞状奇胎発生機構に於いて、胎芽ないし胎児生存の有無は重要な意味を持つが、受精卵から胎児まで、いずれの段階まで発生、発育が起こっているのか、これを確証するには到っていない。卵黄嚢、胎児肝臓より産生されるα-fetoprotein(AFP)を指標に、胞状奇胎発生機構に於ける、胎芽又は胎児存在の有無について、酵素抗体法を用いて検討した。腸管粘膜固有層、臍帯間質結合織、肝臓の中胚葉由来の組織で、AFPの局在を認め、このAFPは、胎児血液からの浸出によるものと考えられた。正常妊娠絨毛(23例中18例:78.3%)、流産絨毛(9例中8例:88.9%)の絨毛間質部に於て、AFPの局在を認め、AFPの局在は、feto-chorionic circulationの存在を強く示唆すると考えられた。部分胞状奇胎は、全例に奇胎嚢胞間質部にAFPの局在を認め、また、全胞状奇胎では、全例、奇胎嚢胞間質部、上皮共にAFPの局在を認めなかった。以上の結果から、部分胞状奇胎では、発生機構上、胚芽ないし胎児の生存していた可能性は高く、全胞状奇胎に於ては、原胚子段階で発生が停止した可能性が高い事が示唆された。全胞状奇胎と部分胞状奇胎は、発生段階から別個の病変である可能性が高く、部分胞状奇胎は、流産の病態に類似している事が推論された。
社団法人日本産科婦人科学会の論文
1987-06-01

胞状奇胎間質部に於けるα-fetoprotein 陰性の意義

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