ヒト卵管の線毛運動に関する研究
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概要
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卵の線毛は卵管の収縮や分泌液の流れとともに卵の輸送並びに体液、異物の体外への排出の役割をするといわれているが、線毛運動については未だよく知られていない。ヒトの卵管について、線毛機能の指標の一つとして線毛運動数を光学-電気的記録法(photo electric method)を用いて初めて測定し、以下の結果を得た。1) 卵管各部における線毛運動数は峡部435.8±102.8、膨大部599.6±97.2、采部626.8±106.7で、采部が最も多く、各部間でp>0.05で有意差を認めた。采部に線毛運動数が多いことは采部の線毛活性が強いことを意味し、卵・体液・異物の卵管内吸引に一役を演じている可能性を示す。 2) 線毛及び線毛細胞は周期的に増減するが、線毛運動数も卵胞期後期では卵胞期初期に比較して、有意差はないが増加し、ことに采部に著しい傾向がみられる。また黄体期では卵胞期に比べて減少する傾向がある。 3) 線毛運動数には年齢差はなく、閉経後にも線毛運動が認められたことは、線毛が卵の輸送のみでなく、体液、異物の体外への排出の役割を果たしていることを示唆している。 4) 妊娠時には線毛運動数が非妊娠時に比べ明らかに減少する。 5) 卵管通水に使用される各種薬剤のうち、ペニシリンGは11.1×10unit/ml以上、セファロチンは100mg/ml以上の高濃度では線毛運動の顕著な抑制がみられ、predonisoloneでは4.62mg/ml以上で抑制が漸増し、25mg/mlでは投与後90分で線毛運動が停止する。一方、ウロキナーゼは線毛運動を抑制せず、促進傾向がみられた。
- 社団法人日本産科婦人科学会の論文
- 1987-05-01