新生児真菌症の研究 : 母体腔真菌の新生児への移行を中心として
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概要
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母体腔真菌が経睦分娩を介して新生児に移行することは,すでに多くの研究者により報告されている.しかし真菌の量的な観点よりみた,母児移行および新生児の生後日数による推移についての報告はいまだみられない.膣真菌検出率は,妊婦と非妊婦に差を認めず,腔Candida albicans(以下C.albicans)検出率は妊婦が21.1%と非妊婦の16.2%より高い傾向にあつた.母児とも真菌を検索しえた332例中,新生児真菌検出率は,分娩直前母体腔真菌陽性群118例では42.4%と母体腔真菌陰性群189例の4.2%より明らかに(P<0.01)高かった.また母児の真菌菌種一致率は少なくとも92.0%以上であった.真菌の母児移行率は菌種による差を認めなかったが,母体膣内の水野高田培地上に形成される真菌のコロニー数が30個以内では18.5%,31個以上では49.5%と有意差(p<0.01)を認めた.新生児真菌の初発生後日数については,口腔では出生直後に最も多く,肛門周辺では生後2日にpeakを認めたことにより産道を通過する時母体膣真菌を新生児が口腔より嚥下し,肛門から排泄する可能性が示唆された.新生児肛門周辺の菌種別コロニー数の生後日数による推移をみると,比較的病原性の強いとされるC. albicansは生後日数とともにコロニー数の増加傾向を認めるのと反して,それ以外の真菌は生後2日までコロニー数が多いが4日には急激に減少しており菌種による毒性の差が考えられた.新生児真菌症は母体膣真菌陽性群118例では4例,3.4%,母体膣真菌陰性群214例では1例,0.5%であり,その起因菌はすべてC. albicansだった.妊娠末期に膣真菌が検出されたが治療により分娩直前には陰性となった群25例の新生児真菌検出率は12.0%と分娩直前膣真菌陽性群に比して有意(p<0.01)に低かった.以上より,新生児真菌症の予防の1つとして妊娠末期妊婦膣内のコロニー数の多いC. alibicans例の有効な治療が示唆された.
- 社団法人日本産科婦人科学会の論文
- 1979-03-01