常位胎盤早期剥離における血液凝固線溶動態の検討
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概要
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常位胎盤早期剥離(早剥)は凝固線溶異常を伴い易く,また母児の生命に危険を及麿すことが多いhigh risk妊娠として知られている.しかし,早剥の凝固線溶動態とくに発症前後の経時的変化は,最近の凝固線溶学の進歩にもかかわらず,ほとんど解明されていたい.したがって早剥の急激な臨床経過に対する治療的対応は,諸家により一致をみるに至っていない.本研究においては,明らかな臨床症状を伴った早剥について,分娩前後を中心に血液凝固線溶系の経時的変化を観察し,早剥の出血傾向の動態の解明を試み,以下の結果を得た.1.対象14例中,経産婦は8例(57.1%),中毒症合併は10例(71.4%),帝王切開例は6例(42.9%),子宮内胎児死亡は11例(78.6%),DIC併発は8例(57.1%)であった.2.軽症例においてはfibrinogenの低値および血沈(ESR)の遅延を示し,血清FDPが上昇する例も認められたが,分娩3日後までには正常域に復した.他の検査値は,正常妊娠分娩経過とほぼ同様の変化を示した.3.重症例(DIC合併例)では,著明なfibrinogenの低下,PT,PTTの延長,血清および尿中FDPの増加,凝固因子(V,VII,VIII,IX,X)活性の低下,血小板数の減少,ESRの遅延,ADP添加血小板凝集能の抑制がみられ,TEGは血小板減少型を示し,ELTは過量のthrombin添加によっても凝固せず測定不能であった.それらは分娩後3日目までにはすべて正常域に復した.しかし,分娩後3日目より尿中FDPのみが上昇する症例が認められた.4.DICの出血傾向こ対し分娩前より,輸血,各種薬剤を投与したが,分娩前の検査値の変動は症例により差がみられた.分娩後はすべて回復傾向を示した.
- 社団法人日本産科婦人科学会の論文
- 1982-04-01
著者
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