産科領域播種性血管内凝固症候群の血液凝固線溶動態および治療に関する基礎的研究 : 家兎の実験的DICによる検討
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概要
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産科領域に併発する急性DICは,すでに凝固亢進状態にある妊婦に発症するため激烈であり,その血液凝固線溶系の病態把握は容易でなく,それに対する治療的対応は確立されるまでに至っていない.本研究は,その血液凝固線溶動態の明確化と出血傾向に対する薬剤効果の基礎的検討をするため,以下の実験を行った.すなわち,thromboplastin(Tp)を2時間持続注入により家兎急性モデルDICを作成し,経時的に血液凝固線溶動態を観察した.さらにこのDICモデルをTp単独投与群,薬剤投与群,大量出血群,urokinase-Tp投与群,分娩時Tp投与群に分け,比較検討を行った.1)各群ともTp注入開始よりfibrinogen,PT,APTT,TEG,ELT,antithrombin III,antiplasmin活性,および血小板数は著明に変化し,Tp注入終了後には,回復傾向または一定の値を示した.しかしTp単独投与群,分娩時Tp投与群では,Tp注入が終了した後も各検査値が持続的に悪化する例もみられた.2)heparin投与群では血液は非凝固性となったが,血小板数およびfibrinogenの減少の抑制をみた.3)aprotinin投与群では,2時間持続投与法は急速投与法に比し抗線溶作用の発現は遅れるが,十分な線溶抑制効果が認められた.4)tranexamic acid投与群はantiplasmin活性,ELT,fibrin平板による線溶活性検査において,線溶抑制効果は認められなかった.5)分娩時Tp投与群ではTp単独投与群に比し著明な凝固能の低下が認められた.6)Tp注入後6時間の死亡率は,Tp単独投与群では54.5%であり,薬剤投与群では10%であった.7)大量出血群ではTp注入開始から1時間以内に50%が死亡するが,Tp投与以前にurokinaseを投与しておくと16.7%に減少した.
- 社団法人日本産科婦人科学会の論文
- 1983-04-01
著者
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