経膣分娩および帝王切開時の母体心機能の観察
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概要
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経膣分娩や帝王切開(帝切)の母体心機能におよぼす影響は大きいとされているが,その詳細についての報告は少ない.そこで,正常産婦12例と,硬膜外麻酔(硬麻)下で帝切を行なった1O例について,心エコー;図法で母体心機能の観察を行ない,この2つの分娩様式の母体心機能におよぼす影響について検討し,以下の成績を得た.1.経膣分娩分娩第1期には陣痛周期に伴ない,第2期には怒責を伴う発作期に,児娩出後は3分と5分で,分時心拍出量(CO)を中心とする心機能の諸指標は変動した.すなわち,分娩第1期では,間歇期に比べ発作期で,COは増加したが,これは子宮口4-5cm開大時には心拍数(HR)が,子宮口7-8cm開大時には1回心拍出量(SV)が増加したためで,COの規定因子の動態に相違がみられた.分娩第2期の怒責を伴う発作期には,分娩前に比べHR,平均左室内周収縮速度(mVcf)は増加したが,駆出時間(ET),左室拡張末期容量(EDV),SV,CO,駆出分画(EF),左房径(LAD)は減少し,強い負の容量負荷が示唆された.児娩出後は,3分と5分でHRとSVの増加によりCOは増加したが,児娩出後10分では分娩前のレベルに回復した.2.帝切分娩硬麻後15分と児娩出後3分,5分でCO等は変動した.すたわち,硬麻後15分では,HRの増加とSV,CO,EF,mVcf,LADの減少を認め,負の容量負荷が示唆された.児娩出後は,3分と5分でCOは増加したが,これはHRの増加によるためで,SVの増加は認められなかった.3.以上のように,2つの分娩様式において,COを中心とする心機能の諸指標は多彩に変動したが,その変動は経膣分娩で大きかった.これは,経膣分娩では疼痛,怒責,周期的なBlood Volume Redistributionという因子が存在するためと考えられる.
- 社団法人日本産科婦人科学会の論文
- 1982-06-01
著者
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