晩期妊娠中毒症における補体系の動態と血液凝固系との関連に関する研究
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概要
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晩期妊娠中毒症は妊産婦死亡の重要な原因であるが,その病因に関しては種々の学説があり,近年血液凝固障害説としてchronic DICの存在が考えられている.また免疫学的側面より腎糸球体基底膜への補体成分の沈着も報告されているが,これらは未だ確立された説とはなっていない.一方で血液凝固における補体の役割が注目されその相互関係が解明されつつある.本研究では,血液凝固と補体との関連を究明し,中毒症の血液凝固障害説に補体という概念を導入して中毒症を新しい観点より検討を行ない下記の結果を得た.1.in vitroにてthrombin,thromboplastinにより補体価の低下を認めた.urokinase単独では低下せず,urokinaseとplasminogen同時添加では著明な低下を認めた.2.家兎における実験的DICにおいても補体価の低下を認めた.3.正常妊娠における補体系の変動では,CH_<50>は対照群に比して各時期で有意の上昇を認めた(p<0.001).産褥期が最も高値で69.0±2.4U/mlであった.C_3,C_4,factor Bの蛋白量も妊娠経過により上昇を認めたが,C_1 inactivatorでは有意の低下を認めた(p<0.001).4.重症中毒症例でのCH_<50>は,52.2±2.4U/mlで正常妊娠のthird trimesterに比して有意の低下を認めた(p<0.01).軽症例では差を認めなかった.AP-CH_50では有意差が認められなかったが重症例では低下傾向にあつた.重症例では,C_4,factorBが低下傾向にありC_1 inactivatorは高い傾向にあつた.以上の成績より重症中毒症では補体活性が低下しており,またin Vitro,in Vivoの成績より血液凝固線溶の活性化により補体が活性化されることが判明し,中毒症における補体活性の低下が血液凝固障害に関連があることが示唆された.
- 社団法人日本産科婦人科学会の論文
- 1982-03-01
著者
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