非生理的乳汁分泌を呈する婦人の内分泌学的検討

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産褥授乳期以外に非生理的に乳汁分泌の認められる38例の婦人について,本症の病態を内分泌学的に検討したら血中ホルモンの測定は全てradioimmunoassayによった.38例中5例に下垂体腫瘍が発見され(第1群),この群の血中PRL値は942±555(SE)ng/mlを示した.15例では非腫瘍性高PRL血症が認められ(第2群),血中PRL値は74.3±12.1ng/mlであった.残り18例(47.3%)はPRL値30ng/ml以下の正常値を示した(第3群)。各群のE_2基礎値はそれぞれ,98.0±47.6,96.4±35.7,133.0±23.6pg/mlと高PRL群でE_2値が低い傾向があるが,各群間の有意差は認めなかった.LH基礎値では腫瘍群5例で6.2±1.6mIU/mlで,第2・第3群に比べて有意の低下があったが,後2者間の差は認めなかった.LH-RHに対する下垂体LH分泌反応でも第1群の4例で低あるいは無反応であったが,第2・第3群ではほぼ正常の反応を示した.TRH,L-dopa,sulpirideなどによるPRL分泌刺激・抑制試験でも第1群ではほとんど反応がみられないが,第2・第3群の例は殆んど正常の反応パターンを呈した.一方,bromocriptineの投与では,第2・第3群で120〜180分後に有意のPRL低下を認めた他,第1群の例でも血中PRL値の低下がみられた.Premarin投与後の地中LH,FSHの変動では第1群で一定の傾向はみられなかったが,他の群ではPremarin投与の12〜24時間後にはLH,FSH共に低下し,72時間後には前値あるいはこれをオーバーする変化を示した.この様に,乳汁漏出症の症例でも半数近くはPRL分泌の亢進はみられず,この正常PRL群では視床下部-下垂体系が障害を受けることはない様である.また,高PRLを呈しても腫瘍によるものを除き,刺激や抑制に対する視床下部-下垂体系の反応は正常PRL群とほぼ同等で,この内分泌器官の予備能も高PRLという状態によって影響を受けていないと考えられる.
社団法人日本産科婦人科学会の論文
1982-01-01

非生理的乳汁分泌を呈する婦人の内分泌学的検討

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