コンピューター解析による骨盤内動脈撮影のパターン診断化への試み : 特に卵巣腫瘍の良悪性鑑別を中心に
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概要
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卵巣良悪性腫瘍ならびに子宮筋腫を含めた計137例について骨盤内動脈撮影(PAG)を実施し,主として術前の良悪性鑑別を中心に検討した結果次の成績を得た. 1) 卵巣良悪性腫瘍および子宮筋腫のPAGで造影される11血管中,上直腸動脈,正中仙骨動脈,外側仙骨動脈,子宮動脈,卵巣動脈の5血管に有意の差をもつて異常像が出現し,上記腫瘍の鑑別に利用しうることが判明した. 2) 上記5血管に出現し,腫瘍の識別可能な異常像はdilatation, stenosis, irregularity, hypervascularity, pooling, tumor encasement, obstruction, A-V shunt formationなどである. 3) これらの異常像をコンピューター因子分析法により解析した結果,次の組合せによる4型が卵巣良悪性腫瘍および子宮筋腫との鑑別を一層容易にすることが判明した. i) dilatation+obstruction: Invaded Vessel Pattern (IV) ii) hypervascularity+pooling+encasement: Spindle Established Pattern (SE) iii) hypervascularity+pooling+A-V shunt formation: Cloudy Shadow Pattern (CS) iv) stenosis+irregularity+pooling: Brush Blowing Pattern (BB) 4) これら4型から卵巣良悪性腫瘍,子宮筋腫は以下のごとく鑑別することができる. i) 子宮動脈にIV型が認められる場合は,卵巣良悪性腫瘍または子宮筋腫のいずれかである. ii) 子宮動脈にIV型,CS型,BB型の中1つ以上を認めさらに上直腸動脈または正中仙骨動脈にIV型を認めれば卵巣悪性腫瘍または子宮筋腫のいずれかである. iii) 上直腸動脈または子宮動脈にIV型,SE型,CS型,BB型の4型の中1つ以上が認められ,さらに正中仙骨動脈,外側仙骨動脈,卵巣動脈に上記4型の中1つ以上を認めれば,卵巣悪性腫瘍と診断することができる. 5) PAGにおいてコンピューター導入の因子分析法による診断を手術ならびに病理組織診と対比した結果, i) 卵巣腫瘍と子宮筋腫の鑑別は100%の正診率であつた. ii) 卵巣腫瘍94例中における良悪性鑑別の正診率は95.7%であつた. 6) コンピューター因子分析法によるPAG診断は卵巣腫瘍の良悪性鑑別の際,腫瘍の大きさ,臨床進行期別分類,種類などに今後検討の余地はあるとしても,従来の診断法と比較すれば客観的かつ容易に診断できることが判明した.
- 社団法人日本産科婦人科学会の論文
- 1978-05-01
著者
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