自然流産の染色体学的・臨床的研究
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概要
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流産時妊娠週数が主として16週以下の190症例を対象とし,胎児・付属物の染色体をG-Band法を併用して詳細に分析し,さらに核型の種類と種々な母体の臨床的事項との関連を検討し,以下の成績をえた. 1. 核型分析成功例は100例(52.6%)であつた. 2. 染色体検索成績:1) 正常核型は51例で性比はXX:XY=57:43, 2) 核型異常例は49例(49%)で,3) 染色体異常の種類別頻度はtrisomy (51%), triploidy (22.4%), monosomy (12.2%), mosaicism (10.2%), tetraploidy (4.1%)であつた.4) Trisomy 25例中ではE群が10例で40%と最も多く,C群乃至X:6例,D群:5例,G群:2例,A群とF群は各々1例であつた.5) E-trisomy中6例(60%)がG-Band法によりNo.16のtrisomyと判明した. 3. 胎児・付属物所見:核型正常群・異常群とも約30%に胎児の存在を認めたが,後者の胎児はすべて変性していた. 4. 母体の臨床的事項:1) 平均年令では核型正常群29.2±4.7才,異常群30.1±6.0才,そのうちtrisomyでは32.0±6.3才と高く,40才以上の5例はすべて異常核型を示した.核型異常別に年令分布を検討すると,45,Xとtriploidではその半数以上が25〜29才であつた.2) 子宮体が妊娠週数に合致して順調な増大経過を示していた最後の妊娠週数(推定実妊娠週数)をretrospectiveに判定し,核型正常・異常群につきその分布を検討すると,8週以前の41%に,9〜10週の62%に染色体異常を認めた.これを核型別にみると,45,Xでは10週までに,triploidでは平均11週と遅くに流産する傾向を認めた.3) 不正出血開始日の平均値は核型正常群より異常群でやや遅く,前者では平均推定実妊娠週数と略一致するが,後者では出血開始日が1週間遅れていた.しかし,不正出血持続日数では異常群でやや短かかつた.4) 既往妊娠歴上,生児数が多くなると染色体異常例が増加する傾向を認めた.5)母体血中progesterone値とHCS値は大部分が正常値以下で,また,核型正常群と異常群とのあいだに差を認めなかつた.
- 社団法人日本産科婦人科学会の論文
- 1978-01-01
著者
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