広汎性子宮全剔術術後尿管瘻発生とその後の修復機序に関する臨床的研究
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概要
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広汎性子宮全剔術後尿管瘻自然治癒例の報告は少ない.当科では尿管カテーテルを術後一定期間留置した191例中23例に尿管瘻が発生したが内11例は自然治癒した.瘻発生後の諸変化を観察して以下の結果を得た. 1. 17例中16例に患側尿管口周辺の水庖状浮腫を認めた.健側にはかかる病変を認めず尿管瘻に特有な所見である.経過観察した5例とも尿漏出著減後には水疱は消失し,内3例はそれまで不能の尿管カテ再挿入が可能となつた. 2. 尿管カテ再挿入の際強い抵抗があつた部位は12例の平均で尿管口から7.7cmであつた. 3. 留置中発生した4例中治癒例は1例のみで,しかも後に重度水腎症に陥つた. 4. 早期に抵抗なく再挿入できた6例中治癒例は4例で,内3例は抜去後の再々挿入は不能となり水腎症に陥つた. 5. 当初再挿入不能で後に可能となつた3例は全例治癒した.内1例は1年後も再々挿入可能だつた.DIP所見は全例正常だつた. 6. 再挿入不能例でも10例中3例治癒した. 7. 治癒例の他に,1日の尿漏出量が一旦皆無となつた例を5例,100g以下まで減少した例を1例認めた. 8. 治癒後のRPで尿管壁の一部欠損と思われる洞形成像を3例,尿管断裂像を1例認め,周囲の肉芽増生による瘻閉鎖と想定した.4例中3例は後に重度水腎症に陥つた, 結論,(1)瘻発生後の尿管狭窄には修復可能な一過性の狭窄と水腎症へと増悪する永続的な狭窄の二種類ある.(2)尿管口周辺の水疱状浮腫の消長と一過性狭窄の修復程度とは密接に関連する.(3)一過性狭窄の成因は尿管壁壊死による欠損と静脈リンパ管閉塞による浮腫と考える.(4)永続的狭窄の成因は瘻孔周囲に増生した肉芽組織の瘢痕化と考える.(5)尿管壁壊死範囲は症例によつてかなり異なり,腎臓移植術後の尿管瘻との比較からも,尿管瘻の直接的原因である尿管壁壊死の成因は,尿管周囲血管網の無自覚的損傷と考える.
- 社団法人日本産科婦人科学会の論文
- 1977-09-01
著者
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