尿中11-deoxy-17-ketosteroidsのR.I.Aの開発とその臨床応用
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
妊婦尿中11-deoxy-17-ketosteroid (17KS)の測定は,胎盤EstrogenのPrecursorとしてのAndrogenの尿中代謝物を測定する方法として臨床的価値が大きいので,R.I.Aによる簡便な微量定量法を開発した.本法により1,182例の妊婦尿(正常妊娠960例,妊娠中毒症177例,予定日超過妊娠25例,SFD妊娠15例,糖尿病合併妊娠5例)の尿中17KS値を測定するとともに,尿中Estrogen (E)をE_3キット(帝国臓器)にて併せ測定し,胎盤aromatization能の示標となると思われるE/17KS比を求めて異常妊娠例における胎盤機能の良否を検じた. I) 17KSのR.I.A法:尿中17KS中の主要代謝物であるandrosterone (-1, 2-^3H)をtracerとし,抗DHEA-3-BSA血清を抗体とする本法は,最小検出量50pgの高感度のため,尿15μlの少量より抽出・純化操作を要しないで定量が可能であり,抽度(accuracy及びprecision)並びに従来のZimmermann反応による測定値との相関も満足すべきものであつた.II) 臨床応用:1) 正常妊娠例では17KSはほぼ4-5mg/dayで,末期にやや上昇の傾向があり,E/17KS比はEの増加とほぼ平行して妊娠月数とともに急上昇し,末期に最高に達する.2) 妊娠中毒症のうち,軽症例では妊娠中期には尿中17KSがやや高く,末期の重症例では明らかな高値を示し,尿中E値はいずれも低値を示すため,E/17KS比は有意差をもつて低値を示し,重症例での低下が特に著しい.3) 予定日超過例では,17KS値は正常例と差はないが,E高値群(30mg/day以上)と低値群(30mg/day以下)の2群に分けると,後者の占める割合が妊娠39-40週例よりも明らかに増加し,且つ本症例に限つてE低値群のE/17KS比が月例のE高値群並びに39-40週例のE低値群よりも明らかに低下している.4) SFD妊娠例ではE20mg/day以下にしてE/17KS比5以下の低E・低E/17KS比の例が明らかに多かつた.以上の如く,妊娠中毒症,予定日超過,S.F.D妊娠などhigh risk pregnancyでは,胎児-胎盤機能の示標としてのEの低下のみならず,胎盤aromatization能の示標としてのE/17KS比の低下するものが3多いことが示された.これは,17KSのR.I.A法の開発が実地臨床上も大きな意義をもつことを示している.
- 社団法人日本産科婦人科学会の論文
- 1977-06-01
著者
関連論文
- 山形県米沢地区における1O年間の婦人科癌集団検診成績
- 尿中11-deoxy-17-ketosteroidsのR.I.Aの開発とその臨床応用
- 卵巣皮様嚢腫の悪性化による扁平上皮癌の1例
- 卵巣未分化胚細胞腫の1例